heartbreaking.

中年の末路とその記録

私はどの会社に入っても上司にはセクハラされてきた

最近キスしてない。最後にキスをしたのは、会社の上司に無理やりされたのが最後でそれ以来していない。確かチョコレートを銜えた上司に手招きされて近寄って、私もそのチョコレートの端っこを銜えたら、引き寄せられてキスされたのを覚えている。かなり年配の男の上司だったから、唇のねっとりした感触を覚えている。重ねた唇が離れた瞬間、私も、はっ… とかため息零してしまったのだけど、それが相手の情欲を誘ってしまったらしく、「君… 意外と色っぽいね…」と、目を丸くしながら満足げに囁かれたのも覚えている。意外と… か私も捨てたもんじゃないのかな、と少し嬉しかったのを覚えている。

その上司は…… 何ヶ月か前に死んだことを後で知った。

私は事務員で勤めていたのだけど、帳面をつけながら電卓をカタカタ叩いていると、事務所に二人っきりだから、その上司のプライベートな電話内容も丸聞こえだった。

その上司は嫁や子が居るにも関わらず、女を買うことが趣味のようだった。アパートを何軒か管理していたので、そのアパートの家賃が滞納している女性にターゲットをしぼり、定期的に電話を入れては「3万…?それは高いよ」とか言ってるのが聞こえてきた。

あの部屋のよく太った娘はあんな見た目だけど具合はいい、とか。空き部屋のメンテナンスをしていたら隣の部屋から、あんあん…とすごい声が聞こえてくるから、あの部屋の女はかなり凄いよとか。さっき家賃を納めにきたあの女とやったことがあるよ…とか。あの女はあそこを舐めさせてくれるよ、綺麗なあそこだった、とか。

二人っきりの静かな事務所の中で、じっとりと続くそういった会話に私の下半身までじっとりしてくる感覚だった。そんな私の弱さに付け入るように、不意打ちのように背後からこの体を抱きしめてくるときもあった。老齢に見合わないほどの力強さで、私は息も出来ないほど苦しんだ。「苦しいです…」って私が声をふりしぼると、背後から「ふぅー… ふぅ」という鼻息の荒さが耳をついた。腰も押し付けられて、鋼に拘束されたかのように私は動けない状態にされてしまった。息も付けぬほど強く抱きしめられるってのは、こうゆう事なんだな…と大人心に再認識した瞬間だった。抱きしめられたまま動けないでいる私の目の前には、鍵も開いたままの事務所のドアがある。こんな場面を見られたら… という不安に妙に興奮したりもした。嫌悪感は、なかった。ただ、訳もわからぬまま、私は逃げられない状態だった。

そして休憩時間には、金庫の中の札束を数えながら、「君、なにか欲しいものがあったら言いなさい。何でも買ってあげるよ」と私に誘いをかけてきたりもした。私は後が怖いので断った。そんな私に、上司は「どうして…?」と不満げに眉をひそめ口をすぼめながら疑うような目で見てきたものだ。どうしても私を手に入れたいんだな、私をどうにかしたいんだなってのが伝わってきた。

でも甘いだけではなく、仕事の面ではとても厳しかった。ちょっとした失敗でも、これみたかみたいに叱り付けてくる。お前は使えない人間なんだよ!だけど慈悲で置いてやっているだけなんだよ!だから私の言うことは何でも聞かなければならないんだよ!という目論見が透けてみえるのが気分が悪かった。

仕事で失敗して気分が落ち込んでいる私に、突然笑顔になって、こっちにおいでよと手招きされたので近寄ると、イスに座ったままの上司のふとももの上に来いと命令されて、「早く… いいから早く、ここにおいで」と言うので、私は「いえ…」と必死に断った。でも一回だけ断りきれず、その上司のふとももの上に座りかけたことがあるけど、タイミング良く客が訪れたので、なんとか危機を脱する事が出来た。あのまま誰も来なかったら、私はどうなっていたのだろう… 

その会社は仕事自体はとても楽で、帳面だけ付けてれば土日も休みだったので、私もその上司のセクハラさえなければ十分満足していたんだけど。

その会社の事務所の中には物置部屋があって、大掃除のときに私がその物置部屋に入ったとき、今脱がされたばかりのような状態の女子高生の制服が床の上にくったりと横たわっていたので、あれは恐怖した。私が立ち竦んでいる背後から「掃除出来てる?」と声がかかってきたのでかなり恐怖した。私がうろたえているのを察知したのか… お互いに黙ったままで微妙な空気が流れた。私は、本当はどうなりたいんだ、こんなジジイでもいいのか、と本当は悩んでいた。私にも隙があったのだろうな… でも加齢臭のするジジイのチンポを銜える趣味はないし、キスをしたとき口も臭かったので、それがネックになっていた。でも今なら私もどうかは解らない。

毎日、家に帰るたびに、その上司のことばかり考えて悩んでいた。座布団の上に座って、テーブルの上に置いたパソコンの画面を見ながら、心の中は上司のことばかり考えていた。くそっ、何で私が… 私が幼児期にどんな体験をして、この醜さを隠しながら生きてきたも知らずに、私の体を利用しようとするなんて最悪なジジイだ、色ボケジジイめ… 殺してやる… と呪いの言葉を心の中で絶叫しながら、何も手に付かない日々が続いた。

そのアパートは、かなり古かったので、アパートの屋上から駐車場に飛び降り自殺した人も居たようだ。ヤクザや風俗も多く出入りしていた。昼間っから外車がたくさん駐車場に停まっていて、スーツ姿の男たちが大勢いたりもした。ある部屋ではガス自殺もあったらしく、新しく部屋を利用する人のためにメンテナンスをかねて、昼間っから真っ暗な(当然、電気は止まっているので) 部屋に入って一人で掃除をしたりもした。もし背後から誰かが入ってきて、押し倒されて犯されても誰も気付かないだろうな… とか考えながら。

アパートの管理人になると、一番怖いのが、この昼間っから真っ暗な空き部屋のメンテナンスに入る事だと思う。これはホントに怖い。

私はどの会社に入っても上司にはセクハラされてきた。最近はようやく30間際で年相応の顔になってきたので、そういったトラブルは減ってきたけど。若い頃は誰でも言わないだけでそういったセクハラは体験していると思う。セクハラってのは何処から何処までがセクハラかっていう線引きが難しいと思う。

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goo blog funamushi2 - 2007-02-14 00:09:29 コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )