heartbreaking.

中年の末路とその記録

クラッカーの思い出

「シルシルミシル」で愛媛県宇和島市のカネコというクラッカー製造会社が出てた。

テレビの中でカネコの社長がクラッカーの数々を鳴らすパーンという音を何度も聞いていると、ある出来事を思い出した。

私は独身時代に整形手術で何百万と借金を抱え、最後には夜の仕事におち、夜の仕事をしても借金は片付かず、とうとう手元の金が一円もなくなり、当時つきあっていた今の旦那の家に「助けてください」と転がり込んだのだった。

あまりにも大きな借金だったため、親にもらった結婚祝いの金も借金返済にあててしまい、さらに旦那には生活費を二年近く入れることができず苦労をかけた。

いろんな人に助けられ、でも最後は自分の力でケリをつけて綺麗な終わりにしたいと思い、働いたものの、派遣やバイトの時給ではなかなか借金は減らず、「借金を抱えたまま結婚してはいけないなあ…」といつも重い気持ちで、「自分はなにをやっているんだろう」と痛恨の思いで毎日会社に通勤していた。

そうして借金が完済した日がついに訪れ、旦那にも「借金が終わりました」と報告した。

その日、仕事から帰り玄関に入ると「パーン」という音がして「うわっ!」とビックリすると、廊下にクラッカーをもった旦那が笑顔で立っていたのだった…

「おめでとうございます」と言ってくれた。そのときは別に泣くようなことはしなかったが、それからかなり経った今になって、思い出して泣けるのは何故だろう…

カネコの社長が最後にコメントしたとおりで、クラッカーは一瞬の思い出を永遠に残す消耗品だなあ…
クラッカーの紐をひいた人のまぶしい笑顔が、いまでも頭にはっきりと、まるで写真のように焼き付いている。
ああ、私は幸せだったんだなあ… と再確認する心地よい涙だった。