heartbreaking.

中年の末路とその記録

セフレしか無理な人とセックスしたあとで「好きです」と告白されました

どうやって知り合ったのかは書かないですが、私にとっては1年近くぶりのセックスでしたので簡単に記しておきます。

その人は、私が家賃を払うのも困窮するほどお金がないことを知った上で会ってくれると言うので、久々に美味しいご飯が食べれるのかなと子供みたいに期待しつつ…(お恥ずかしいのですが) 財布に小銭しかない状態で会いに行きました。

会うと人の顔を見ていきなり「おばさんだね」と言ってくるので「正直に言いすぎだろ」と思いつつ… 食事を奢ってもらってその後は夜食のドーナツなどをコンビニで買ってもらってホテルに入りました(それと、昔スレで口臭が酷いと悪口書かれたのが気になっているというかトラウマなので…… 飴を買ってもらいました)。

久々のホテルなので部屋にたどり着くまでの微妙な空気も楽しんでいた。ふうん、で、この中入るとやっちゃうんだよね的な視線でそれとなく相手の姿を捉えつつ… 廊下を歩いている間は昔べつの誰かとこうして何度も歩いていた自分が重なり強気でしたが、部屋の中に入ると圧倒的に二人きりの空気の中で逃げ場などないという緊張感から動けなくなっていた。とりあえず、えーと椅子に座ろうか… で、どうする?

会話はチョットぎこちない感じだ。このあとにセックスするんだからそりゃ緊張する… あー… 早くセックスしたいのに普通の会話が続いているので内心余裕がなくなってきて「この人本当にこれからセックスする気があるんだろうか?」と疑いはじめていたのだが後でセックス後に聞くと相手もこのときは同じことを思っていたらしい。

しかも緊張のせいなのか喉が渇いてたまらない…

まず相手に寄り添いキスをすることが敷居が高すぎて1年もブランクのある私には無理ゲーだった…(いや、やる前提で会っているのだからキスをすればよいのだろうが)。

私からはどうにも無理だ。あなたから来てほしい…!心の叫びが通じたのかどうかはわからないが空気が一変する瞬間が訪れた。相手の表情が急に真剣なものに変わるのでこちらもハッとして少し身を強張らせた。すると相手のほうがもう耐え切れない…! といった感じだったのか、突然この身を引き寄せられて唇が重ねられていた。電光石火の如くですぐに舌が入ってきてあっという間に場の均衡が崩れ去りベッドの上に雪崩れ込み股を開いていた。

部屋の外で会ったときは「きみがおばさんで安心した」などと言われたので「そうだよ、おばさんだよ」と返していたのだが、服を脱いでベッドの上で抱き合うようになると、私の上に乗っかったままの彼が私の顔を見つめながら何度も「かわいい」と繰り返した。

……。その言葉を私は本気で信じてもいいのだろうか。だってあなた最初に会ったときは私のこと「おばさん」って言ってたじゃない。本当に「かわいい」と思ってるのかしばらく信じられずにいると彼は私の鼻に優しくかぶりつきながらまた「かわいい」と言う。そして耳の中を丁寧に舐められるとおもわず萎縮してしまった…

私にとっては約1年ぶりのセックスだから緊張していたのもある。私が出来ることはぜんまい仕掛けの機械のようにぎこちなく舌を動かすことくらいで積極的になるのがとても怖かった…

男によってキスの仕方が全然違う。せかせかして舌がぎょろぎょろ動き回るだけのキスは色気もなにもないので私は好きではない。彼は愛情たっぷりの甘いキスをしてくるのでやばい、ちょっとちょっと… これでもし本気で好きになったらどうするんだ。たとえるならば私は彼にとっては甘いスイーツ状態で… 自分が食べられてる感じがずっと続いていた。やばいこいつ上手だとおもうときは自分の格好悪さに気づかれるのを懼れて受身に徹してしまう。そんな自分を責め続けながら興奮を1/2にすり減らしても無難な選択しかできなくて冒険できなかった。

キスひとつでこの混乱状態で… ブランクが長いと昔の経験もぜんぜん活かせなくて純情に逆戻りしていた。もっと燃え上がるようなキスをしたいのに唇全体を使って映画俳優のような情熱を表現できない…(いつも洋画を観ているのに全然活かせてないな…) もっと気持ちを昂らせることもできるのに1/2にもったいなくさせているのは自分の魅力を信じることができずいつも過小評価しているこの心が弱すぎるからだ…

顔中にふりそそぐキスの嵐は経験したことがなかったので、わけがわからないほどにいまだかつてない愛がふりそそいできている状態だった。

戸惑う私の体におおいかぶさったままの彼が微笑む顔が頭に焼き付いてしまった。慈愛に満ちた瞳のきらめきはレーザービームのようにこの胸を真っ直ぐに射抜く。この体はベッドの上に串刺し状態にされていた。

事前に円形脱毛症であることは伝えてあるので、私の禿げてる頭が見えても問題なかった。彼は私の髪に触れ「ほんと、禿げてる」って微笑みながらその付近をあらわにさせ、慈しむようなキスをくれた。そんなふうに私の駄目な部分をいとおしげに扱われると戸惑いはますます加速して彼にされるがままになってしまった。もう、お願い… 好きなようにしてほしい。

彼はなかなか射精しない人でとても長いセックスになり私にとっては初めての経験だった。長いのを嫌う女性もいるかもしれないけれど私は長いほうが好きなので自分が夢に描いた泥沼のようなセックスの中に溺れて声をあげることも躊躇わなくなっていた。嗚呼、まだ私の中にこんなに女があったなんて嬉しくて気持ちよくて嗚呼死にたい、殺してと思った。

通り抜ける風のように激しい時間の中で一度だけ「好きだよ…」と言われたけれど、お互いに理由あって付き合うことはできない関係なので私は何も答えられなかった。

その後もメールでやりとりをしているけれどついセックスの回想話になることが多くて体がおかしくなる。

彼と一つになりながら背後から強引に唇を奪われたとき、愛してる、と思っていた。そういうセックスをされていたと思う。セックスの最中に愛していると思いたくなるのは初めての経験だった…

私が彼とのセックスが忘れられなくて「いままでで一番良かったよ」と伝えると彼は「あんなの普通だよ。いままでどんなセックスをしてきたの?」と驚いたような反応で…

そうなの?というか、どんなのが普通のセックスなのかがわからない。

そして彼から今朝、告白のメールが届いていた。「きみのことが好きだ」という内容のものだった。

私にとって衝撃だったのは、セックスの最も激しい時間に一度だけ「好きだよ」と言われたことはその場しのぎの気まぐれかと思っていたのに本当だったなんて… とても嘘をついているようには思えないような真摯な内容だった。

そんなときにかぎって猛烈な眠気が襲ってきたので彼とのメールを中断して眠ることにした。自分にとっての難しい問題はすぐに答えが出せない。「好きだ」と言われてすぐさま「私も好き」と応えられない。毛布と布団両方を頭までかぶり自分の体臭だらけに包まれながら安堵していると、気の緩みの中でさまざまな過去のセックスを思い出していた。

彼からの「告白」が私の不安定な心をグラグラと揺らした。

「君が好きです」という言葉が私の惑星に突然飛来した隕石のように今まで信じていた世界を崩壊させていった。

頭の中でぐるぐる考えながら毛布と布団をかぶっていると突然目から涙があふれてとまらなくなっていた。

「君が好きです」の言葉一つにすがりつくしかない今の情けない自分に対して流れた涙だったのかもしれない。

アニメのように一日中セックスをするなんてことが本当に可能だとはおもっていなかった。(2015-11-18)