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heartbreaking.

旧URL http://kuroihikari.hatenablog.com/

 

不倫は一泊まで

不倫をしたことで過剰な非難を受けている芸能人や有名人に対して、特別悪い感情を抱いたことは一度もなかった。ただ、気の毒だなとおもいつつ、スマートニュースを眺めていた。綺麗ごとだけじゃ生きてけないことを、その人たちは知っている。ずーっと同じ体じゃ飽きるだろう……生きてる間に、どれだけの違いを楽しめるかを追い求めたほうが、面倒くさい一人の感情に縛られたままで灰にならずに済む。つまらない、マンネリのセックスだけに閉じ込められて人生を終えるなんて、生きてるとはおもえない、一度でもその楽しみを知ってしまったなら。

見知った顔がぐるぐると巡り合うだけの、閉ざした田舎の片隅で、歳をとった自分に声をかける男など誰もいない。代わりに声をかけてくるのは、ばあさんばかりだ。スーパーでバターを選んでいると、見知らぬばあさんが背後から「チューブのほうがええ」と話しかけてきた。

つまらない繰り返しの日々なのは、自分に恋人がいないからだ。贅沢はいわんから、近所に、セックスができて、夜中でもマックや吉野家にメシを食いに行けて、カラオケも行ける、そんな便利な友達がいたら良いのだが、あいにく、安い賃貸では、自分と同様にみずぼらしくて、なんの魅力も感じないような人しか見たことがない。

自分がまだ希望を持てるのは、長年のネット活動で得た、微弱な影響力を利用しての、出会いだった。

そうしてようやく出会えた、potexさんに、知らずのうちに、どろりと依存している自分がいた。そして、奥さんの目を誤魔化しながら、私に会いに来てくれる日を待ち続けた。

なんせ距離が遠かった。

彼が東京から、私の住む四国までの移動には金も時間もかかる。そこまで労力をかけて会いに来るほどの女ではない、どこにでもいる、平凡な女だ。何が付加価値を付けたのかというと、それは私の長年のブロガーとしての活動の結果だった。彼が会いに来るのは、ただの女ではなく、彼が惚れこんだ文章を打つ女だった。

毎回ホテル代を払うのも大変だろうと思い、私の部屋に招くことも考えはした。でも、安い賃貸で壁が薄いので、もう駄目ええ死んじゃう!とか言ってたら隣に即、壁ドン!されちまうからな……もう、この賃貸に暮らせなくなっちまうってことなんだ。あのお隣さん、あんな真面目腐った顔してるくせに、実は……とか思われたくない。

ฅ(´・ω・`)ฅマンションの部屋を出るべきでしょうか?

いつも地元のホテルに一泊して、翌日には帰ってしまう彼が、今回はもう少し長く一緒にいたいので二泊すると言い出したので、心の中で、喜びが花を咲かせた(けれど、その気持ちを押し隠した表情で、賛成と伝えた)。二日も一緒にいられるなら、いままで出来なかったこと、たくさんできる。

書籍も無事に出せたことだし、打ち上げもかねていたので、二人でのんびりしたい……部屋のドアを開けると、彼が、申し訳なさそうに「狭いけどごめん」と言いながら荷物を降ろしてゆく。ここまで来る旅費も随分かかっただろうし。それに、セックスするだけだから、部屋の広さなんてどうでもいい。
おそらくこの半年ほどで彼は、私のためにかなりの金を使っているとおもうのだが、奥さんにばれないのだろうか。その背中が、ちょっと、いや、かなり……疲れているように思えた。

毎回、泊まるホテルは違っていた。彼が選ぶどのホテルも立派なたたずまいで、普段の自分には縁のない世界だった。子供のような気持ちで、通路に飾られた花や、絵画にいたるまでを観賞していた。毎回、綺麗なホテルを選んでいるのは、彼なりの配慮なのか。ラブホ代すらも折半を求めてきた地元の不倫相手(この記事の人)と大違いだ(これ実話で、実は結婚中も不倫してました)。

いつも、通勤途中に原付で、それらのホテルの目の前を通り過ぎるだけだった。その、それぞれのホテルに泊まり、部屋の窓から、見慣れた街の風景を見下ろしている。それも裸で……(後ろには裸の男がいる) レースカーテンを閉めると、もうそこは完全に二人だけの世界だった。

1円も払わずに、綺麗なホテルに泊まれるのは、自分が女だからだ。

二泊もするのだから、あせる必要などないとおもいながらも、自分では気付かずに、かなり溜まっていた。キスをしながらベッドの上でもつれあうと、もう前置きなどどうでもよくて、すぐに一つになることを求めていた。まだ濡れてないので、きついと言いながら彼も強引に押し入ってきた。

彼の頭を両腕で掻き抱きながら、唇を重ねて、腰を動かしているときに、頭の中で別れた夫とのことが思い浮かんできた。こんなセックスをすることで夫の心をつなぎとめてきたのに、離れてしまった……そんな思いまでもすべて彼と一つになることに没頭する中に沈んでゆけばいい。

もう制御できなくなっていた。私が求めている理想とするセックスが、こんなにも簡単に実現していることに、内心、恐怖すら覚えるほどだった。気持ちよすぎて、体がぐずぐずに溶けてしまいそうだった。嗚呼、奥さんのいるような人と、こんないけないことをしているなんて……最高だとおもった。いまがすべてだとおもわねば、こんなことは楽しめない。

奪うつもりなどないし、自分にはそれほどの魅力などないと気付いているけれど、彼の心の中の比率をどこまで自分へと傾けることができるのか。もっと私のことを好きになってほしい。本当の愛で壊れるほど抱いてほしい。あなたの常識の殻を突き破り、もっと、救いようのない場所まで手を伸ばしてきてほしい。

これを続ければ、いつか足元が崩壊して、二人の楽園へと堕ちてゆける願望が胸の奥に消えない。それが、この関係に意味を持たせようとしていた。

もっと色々な体位を楽しむつもりだったし、目隠しをしたり、縛ったりする予定もあったのだが、それらは思うだけで終わって、いつも通りの平凡なセックスだけで満足してしまった。

結局、眠気と、体力のなさが重なると、どんな想いも欲望も、それに打ち勝つことはできない。それに、もう歳かもしれない、最近、四十肩で腕があがらなくなっている。彼のそれは、また元気をとりもどそうとしているのに、それをしごき続ける腕の力すらなくて、ただ、握ったままで、心の中でごめんねと謝った。

もう、しないの?という雰囲気が漂う中で、ごめん、眠くて体力がないだけなんだ……と思いながら布団を鼻まで被って、じっとしていた。

……。ベッドの上でノートパソコンを開く彼の体に寄り添いながら、一緒に、画面を眺めていると、私のブログ「heartbreaking.」が映し出されている。
なんだこの、異様な威圧感のあるブログは……自分のブログじゃねえか!

驚いたな、人のパソコンの画面に映し出された自分のブログのトップページや、各記事は、まるで違った印象を与えてくる。そういうのを見てしまうと、誰かとベッドの中に裸でいる状態であっても、自分のブログへの愛情が心ん中で爆発している。外側から見ると、結構、イケてるブログじゃねえか……と驚いた。セックスもいいんだが、布団から飛び出して、いますぐ自分のブログに戻りたい気分になってきた。

私の中の、はしごたんが叫んでいた。俺は自分のブログが大好きなんだ!愛している!今、隣にいる彼よりも……

そして、その画面に映し出された青ピカチュウさんの引用記事を目にした瞬間から、二人の空気は一変した。

私 「いくらなんでも引用しすぎやろ、これ」
彼 「俺のパソコンからログインして言い返すか」

彼と会う大切な時間に、ブログ活動をするつもりはなかったので、パスワードは持ってきていない。しかし、緊急事態となっているので、自分のはてなIDにログインし、青ピカチュウさんに対して、その引用をやめてくれませんか!と伝えねばならなくなったので、服を着てホテルを出ると、彼を連れて、私の住むマンションまで移動することになった。

ホテルから私のマンションまでは距離が近いので、タクシーを拾わずに、歩いて移動した。彼は隣を歩きながら、結構大きめの声で、「はしごたん」の話題を出してくるので、何度も冷や汗をかいた。

ここは私の生活圏なので、出来れば、その胡散臭い名前は出さないでほしい。

惚れたブロガーが隣にいると、興奮状態で、そうなるのかもしれない。だが、いまはやめてくれ。二人きりのときなら、いくらでも答える。私は完全、匿名ブロガーだからだ。

オフ会とかオフパコとかしてるブロガーたちは、自分のブロガー名を大声で、いやー青二才さんはすごい人気ですね!とか、カンドーさんのビッチ記事最高でしたよ!とか、居酒屋とか公の場で言い合ったりするんだろうか。なら、私はそういうのには参加できない……まあ、誘われたこともないので悩む必要もないのかもしれない。

話は脱線したが、そうして、私の住むマンションに彼はやってきた。

私は、彼の目の前で、パソコンを起動して、自分のはてなIDにログインし、青ピカチュウさんへ、その引用を削除してくださいというコメントを入れた。彼は、へえー、はしごたんはこういうふうに文章打つんだね、みたいに観察していたようだ。
彼が退屈だろうとおもい、コリラックマのぬいぐるみを手渡すと、しばらくはそれを抱きながらじっとしていたようだが、私のユニクロのフードの中に、コリラックマをスポッ!と入れてきたので、それでこういう記事を打っている。

青ピカチュウさんのブログにコメントを入れ終えると、再び二人でホテルまで戻ったが、その引用の必然性に彼がこだわり続けたことが原因となって、状況が悪化して、それ以降、二人の空気が盛り上がることはなかった。

あまり人のせいにしたくないのだが、今回は、青ピカチュウさんの引用がきっかけとなり、私たちの関係は最悪な状態まで陥っていた。本の売り上げの問題ではなくて、本を出したあとの気分の問題なのだ。

そのあとで色々あって、「もう終わりにしよう。」とメールで言われたこともあった。正直、ショックだったけれど、彼を完全に手放すつもりはないので、「別れないので、いつもどおりで待ってます。」と伝えておいた。

そのときは喪失感があまりに強くて、陽気な映画に救いを求めた。キャメロンディアス主演の恋愛映画「ベガスの恋に勝つルール」を観ていた。映画では、キャメロンディアスがヒャーアアア、とか言ってるドタバタコメディで、だいぶ、気分が軽くなれる。

映画を観ながら、いろいろ頭の中を整理していった。相手は奥さんがいるわけだし、ここで終わってよかった。

だけど、もう二度と彼との書籍は出ない。まるで、ファーストアルバムを出して終わる、中途半端なバンドのヴォーカル気分だ。
とにかく、これからは一人だから、しっかりしなくちゃいけないとおもった。いつも近くに、頭のいい人がいてくれると、それに安堵して、自分が考えるよりも先に、その人に聞いてしまう。結婚しているときは、機械関係に強い夫に頼りっきりだったこともある。考えようとしないのは、私の悪い癖だった。

そして私は一人が好きだとおもっていたが、実際、ネットで常時話せる相手を失ってみると、本当に一人が好きなのか?と、自分がわからなくなりかけている。
いま、よくわからない状態となっていて、不安定で、動物が飼いたいという願望が膨れ上がっている。想像する。走りまわる、うさぎや、ハムスターを。そう、さびしいんだ。会話がないのは、いいことなのか悪いことなのか、もうそれすらもわからない。コミュニュケーションをとるのが苦手なので、会話はないほうがいいのかもしれない。私は自分の話を、ただ黙って受け止めてほしい。

彼と連絡が取れていなかった期間について(2016-04-02)