heartbreaking.

中年の末路とその記録

どの男も二人きりの時は可愛くて、まるで子供のよう。

昨日は「自由民主党」「塩崎やすひさ」で一票を投じてきた。小学校の体育館はすっかり寂れている。その静寂の中を雨に打たれて歩きながら、一つの義務を果たしたという気持ちで帰路に就いた。

私も昔は投票行かない人でした。私の両親も投票には行かない人です。

それが何故行くようになったのかというと、元夫が投票には絶対行け!という人で、夜は酒を次々空け上機嫌で選挙速報を見ている人だったからです。最後には私の尻を何度も叩きながら「僕はこう思うんれすよ!」と右に思いきり傾いた演説が始まり、ベッドの上でプロレスをしていた。そんな一つ一つが私にとってはかけがえのない宝物で、思い出すと幸せだった。

昨日は長時間眠っていると、また元夫が夢に出てきて、煙草を嫌う人だったのに、私好みの顔をして煙を燻らせているから、私はその横顔を夢中で追いかけていました……二人で幸せになれるよ、まだ愛しているという気持ちが爆発して宇宙も崩壊させて二人だけの世界になる幸せな夢で、いつまでも覚めないで続いて欲しかったので、起きた時は現実にかなり打ちのめされました。もう戻れないんだな……と。その時は頭の中は100%元夫になっていた。

元夫との安らぎの世界に戻りたいと思っている自分がいる。あの安らぎは、二人で30代のきらめきを駆け抜けながら作った、老後も一緒に他愛もない会話をして過ごそうねという約束であり心の故郷だった。

今付き合っている人とはそうした安らぎとは違う。

私は、彼の危険な過去を追いかけていて、会話の節々に顕れる普通ではない考え方にとても興味を持っている。一つの文学作品が目の前にいて、それを鑑賞している。

彼の背中には刺青は入っていないけれど、体をよく見ると、小傷があちこちに付いていて、そこに彼の人生を想像しながら男らしさを感じながら抱かれる。

彼に感じるデジャヴは何だろう。付き合い始めてから、初めてのような感じがしなかった、ずっと。

昔、父の親友で、刑務所上がりで改造銃を持っていた元極道のおじさんがいた。

仕事はしているのか、していないのか、如何にも遊び人の風貌で、なのに女にモテるという話は聞いていた。

こんな人と付き合ってみたい。このおじさんは、どんな女の人と付き合っているのだろう。

でも私なんて、相手にされないだろうな……

私みたいな子供じゃなくて、もっと大人の女を抱くんでしょ。私なんて女として見ていない。

いや、口にしないだけで案外私のことを女として見てくれているのかもしれない。そんな葛藤を心の中でしなくてはならない男だった。罪な男って、いる……

何年かして、そのおじさんは亡くなった。

今の彼氏をよく見ると顔も、その亡くなったおじさんとどことなく似ている。

おじさんが私に会いにきた……?〇〇ちゃんが不安定だから俺が守らないと、って心配して会いにきた……?そのおじさんにそのような想いを抱くのは、過去に心霊現象を体験しているからだ。

親友の娘を心配するあまり、彼の心に宿ったのだと信じている。

彼は、信じられないくらい私に優しい。お腹が空いたら料理を手作りで大雨の中でも自転車こいで持ってきてくれるし。自転車で来るのは私のマンションに来客用の駐車場がないからで、車を運転させても完璧だし、ドアもマナーよく静かに閉めてくれる。

一緒にテレビを観ていて、子連れの主婦が出てきたら、そっと私の身体に触れながら「(お前が)可愛い」って繰り返して、私が自信を失わぬよう励ましてくれる。

私が自分のことを「おばさんだから」と呟くと、「お前はおばさんなんかじゃないよ」と言いながら、この顔も体も褒めてくれる。30分で10回くらいは「可愛い」って言ってくれる……だから私は彼に会うと本当に、その時だけは可愛い私になれる。

元夫は離婚後に再開した時に、私の顔を見る度に「老けたね……」と哀しそうにしていたので、私もその言葉を聞く度、小さく元気を失っていった。元夫の中では出会った頃の私のままで時が止まっているのかもしれない。だから私がどんなに努力しても、お前は昔のままだとすぐに時間を巻き戻そうとしていた。心の部分が老いたというならまだしも、体の老いを互いに素直に言い合っていても、いいことなんて一つもない。自信を失うだけ。

私を命がけで守ってくれる強い男をずっと待っていたんだけど、長年の願いが叶って、ようやく手に入れたのが今の彼なの。だから私から彼にサヨナラ言うことはなくて、別れがあるとしたらそれは彼が私に飽きた時。

たくさん女を抱いた男でも、私のような貧相な身体に夢中になれるの……?不思議。私は自分の身体に自信がないのに、会うと抱きしめられて、おっぱいが見たいようなので下着をずらして渋々おっぱいを見せると、私の小さなおっぱいを一生懸命揺さぶって「ほら、大きいよ」って必ず言ってくれる。

お尻を見せれば、肉の付き具合がちょうどいいしビヨンセと変わらないと褒めてくれる。シャキーラだと言われることもある。それで一緒にシャキーラの映像をようつべで観てみたけど、全然違う。

彼は夢中で私の身体を抱き、まるで子供のようにこの胸に顔を埋めて安堵している。

小さな子供のように甘えてくる彼の肩を、私は母のようにそっと抱きしめ、二人はすべての不安と、黒い過去から束の間解放されて自由になれる。

どの男も、二人きりの時は可愛くて、まるで子供のよう。

この乳房を銜え、母の愛を得た幸せな赤ん坊のようになる彼を悲しませるようなことはしたくない。

好きとか愛してるじゃなく、彼は私にとっては大切な……大きな子供なの。とても大切なものなの。

彼が更生出来るかどうかは、すべて私が応える愛情にかかっている。

会う度聞かれるのだけど「俺のことが好きか?」って。まだ不安を感じてる……?

安心して。私は何処にも行かないから。貴方が私のことを大好きでいてくれる限り……