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中年の末路とその記録

厚生労働省がネットから美容整形外科のビフォーアフター写真を隠してゆくことで、今後どうなるだろうか。

美容整形外科で豊胸手術をしたことがあるので、自分以外の人の症例写真をくまなくネットで調べたことがある。その美容手術のビフォーアフター写真が掲載禁止になる動きがあるようだ。

厚生労働省が25日に開いた検討会で、原則禁止する方針を決めた。国民から意見を募り、来年6月からの禁止を目指す。脂肪吸引や二重まぶたにする手術などが想定されている。
「美容手術で変わった」ビフォーアフター写真掲載禁止へ:朝日新聞デジタル

美容整形に興味のない人にはどうでもいい話だろうが、このビフォーアフター写真がなければ、その医院の先生にどの程度の技量があるのか見極めるための判断資料が一つなくなる。その医院の写真が虚偽か誇大かを今後も疑うなら、厚生労働省が、事実を調査した上で個別に医院を指導してゆけばいい。私が危惧するのはネットから資料が奪われることだ。

自分の理想通りにならなかった、騙されたと感じている年間1,000人の意見については、感じ方に個人差がある問題であるし、あまりにも理想が高すぎる人の場合はどうやったって失敗例となるだろう。

ネットでビフォーアフター写真を見たことだけが理由で、整形手術に踏み切るという人のほうが少ないのではないか。

それに踏み切るには、それなりに根深い悩みがあるからそうするわけで、どちらにせよその選択肢を無視しては人生を納得して過ごすことが出来ないという人達には、ビフォーアフター写真を見ながら具体的に自分がどういった風に変わろうとしているのかを検討する資料が必要だろう。

一般人のビフォーアフター写真は、現在ネットでいくらでも見ることが出来る。まんざら虚偽だらけというわけでもないだろう。現に、結構、不自然な出来栄えの写真も流れているぞ。

より自分に近い容貌あるいは体形をした一般人の資料を隠さないことのほうが、これから手術を受ける人に過度に期待を抱かせないために大切だろう。何も写真がない状態で説明されて判断するような種類の手術ではない。それらすべてをネットから隠してしまうことで、術後に失敗したと感じる人の不平不満が完全になくなるとは思えない。

厚生労働省が、ネットからビフォーアフター写真を隠してゆくことで、今後どうなるだろうか。手術を受けたいと思う人は直接、医院に足を運んで、そこで、まさに医院にとって都合のよい選り抜きの症例写真のみを直接、目の前で見せられることでどうするか決定しなければならなくなれば、そのほうが危険だ。

私の話になるが、20年近く前は今ほどネットに美容整形の情報がなかった。雑誌の中にあるたった一つの症例写真が=その医院の印象といった感じで、それなら危険だと思うが、今ほど多くの症例写真があふれているのなら、なにもわからず豊胸手術に踏み込むのとは違う。私は今の人達が羨ましい。情報に乏しかった頃に悩んでいたために、現実を知らないまま手術に踏み切り、どう見ても不自然なおっぱいと10年近くの間共存することになり、恋愛もままならない若い期間を無為に過ごした。

ネットから見えなくさせてしまえばいいという極論にするのは、今後、美容整形業界を、情報の見えなかった過去に逆戻りさせることになるのではないか。見えなくさせれば問題は解決するという安易な考え方の下、閉鎖的になってゆく闇の世界の中で犠牲者の数は減ることはなく、根源的な問題は、問題のある医院を指導することにあるので、厚生労働省は今からでも考え直したほうがいい。こうした動きが加速すると、利用者は各々の想像だけでその手術を受けねばならなくなる。