heartbreaking.

中年の末路とその記録

電話番号を教えてもらってから、正直焦っていた。

仕事から戻り、電話かメールしようかどうしようかと思っていると、曖昧な思考を一気に一点に集中させる、絶妙なタイミングでスマホが鳴って、「おつかれさま」の一言が入っていた時の喜びは、多分、相手には伝わらないだろうな……

それで、それだけで、生きる意味というか価値を得られることがある。

会いたいと思っている相手がいて、その相手もまた同じように自分へと今意識を向けている。離れていても繋がっている感覚が、きっと、曖昧な日々を乗り越えてゆけるチカラになる。

だから恋する気持ちを失いたくない。

なのに、なんてタイミングが悪いんだ。このまま黙って同時進行させていっていいんだろうか。

彼氏との約束の時刻が差し迫る中、職場で自分のことを誘ってきた人のほうへ必死にメールを返し続けていた……

敬語で丁寧な言葉遣いを見ていると、嗚呼、もしかしたら生涯をわかちあうのはこういう人なのかなと思った。自分は何処で軌道を外れてきたのか、純愛を忘れかけていた。

どうもこっちのほうに意識がとられすぎていて、仕事以外の時間は頭の中がぼわーんとしていて、早く会いたいという想いだけがはっきりとしている。

会いたいと思っているので、具体的に二人で会う日の約束を交わしてしまった。

断る理由がない。

自分の気持ちに素直でいたいし、相手にもそれを伝えたい。そういう部分で誤解を与えたくないので。

この誘いを断ることを悔いることのほうが、リスクを冒すことよりも怖いんだ。

その人が自分にとって必要な存在かもしれないのだから、まずは会ってみないとわからない。

性欲が最近ようやく回復してきたところに、来た……新しい恋の予感が。

いやもうすでに始まっているのかもしれない。自分の中では。

なんにしろ過度に期待を抱きすぎないほうがいいのだが。会う日に何が起きるのか?(それとも何も起きないのか)という妄想が今の自分を動かしている……といって過言ではないほど期待は膨らんでいる。

電話番号を教えてもらってから、正直焦っていた。

早く電話をしなければならないのに、あまりがっついてると、ひいてしまってそのまま疎遠になる可能性もなきにしもあらず……どうすればよいのかわからなかった。

食事に誘われた時、それに反応を示さないでいると相手はどう感じるか。

「お高くとまっている」という嫌な印象を植え付ける可能性もある以上、ただ相手からの連絡を待つだけというのは危険が高すぎる(実際、彼氏は付き合う前の私のことを誤解していたようで「お高くとまっている」と感じていたようだ。こちらはただ迷って電話出来なかっただけなのに、そういうことがあったので)

時間が蓄積するほど誤解が大きくなってくる。

会社では周りの目もあるので、相手が何を考えているかがわからなくて、不安を感じていた。

もう飽きたのかなとか、どうでもよくなってきたのかなとか、そう思い始める時は、まだ始まってもいないのに終わりにしようとしていた。

二人で会うってことは別に大したことじゃないんだ。

簡単なことなんだ。始まってもいないことを深く考えるほうが馬鹿なんだ。そんな感じだと人生無難なままだろうが、楽しくなんかならない。

今日電話が来るかどうか。メールが来るかどうか。それが大事なんだ。

いつまでも待たせすぎると、ろくなことがない。だから……勇気をください。

人はどんなに人に対してよくしてやっていても、裏切られる時は、簡単に裏切られる。

そのことがわかっていたから、私は人に対しては、裏切られてもいい程度の愛情しか注いでこれなかった。

まめに連絡を取っていても、言葉と約束で心を縛ろうとしても、どんなに自分が努力しても駄目なこともある。

そんな中で、新しい恋は次々とやってくる。(彼氏に見つかった場合の防衛手段として、フィクションということにしときます)