heartbreaking.

中年の末路とその記録

壊れるほどに貴方のすべてが欲しい……

会社で好きになった男性と向かい合い、その顔を、目を見つめながら甘いものを食べていると、思わず「いまが一番幸せ」って呟いてしまった。

それに対しその人は「いまが一番幸せと思えるのが一番いいことだよ……」と言いながら微笑んだ。私はその手や指先を見つめていた。

今はその人のことしか考えられない。

どうすればもっと一緒にいられるのか、数日でも逢えないことが悲しくて胸が見えない刃で斬り刻まれるように痛くてたまらない。

どんなに話を聞いてもわからないことの多いのは、私のことをどんなふうに想ってるのか……

その秘密を少しずつ紐解いてゆくように、体の相性が大事だとか、俺は物を長く大切にするとか、直接的ではなく間接的に、想いをにじませてくる。

その言葉一つ一つが、私の心にくいこんでゆく。

抱かれた時の記憶を鮮明に呼び覚ます、二人にしか開けられないあの扉を開く暗号は、会話の中に時々気まぐれを装いながら、ちらちらと次の嵐の予告をしてくる。その情景を想像してすぐに濡れてしまう。

いつも濡れている。やむことのない雨にふられるように体中びしょ濡れでその人のことを想っている。連絡をあまり頻繁にはできないつらさは、まるで飼い主をひたすら待つ犬のよう。だけど、まだ誰にも飼われていない。ただ一つ、確信の持てる、あの言葉が欲しい。世界中の希望と光をすべてこの手の中に拾い集めたような、貴方からの「愛してる」の言葉を得られるように私はどうしたらいい……

一緒に死んでもいいと思えるくらい、惚れている……

そんなことは、相手には気付かせぬように振舞っている。

独占したい。毎日繋がっていたい。誰にも飼われていないつもりで生きていた。私が初めて、首輪を付けて欲しい、蹂躙してほしいと願う、貴方の思うまま。その貴方にいつまで、待てとおあずけをくらえばいいのか。逢える日までその苦しみは際限なく続く。

そのしなやかな体に薄く膜をはる汗を、この舌で一滴残さず舐めとりたい。

貴方のすべてが欲しい。すべてだ……