heartbreaking.

中年の末路とその記録

会社の男性について その1(悩み)

休日に二人だけで逢う男性の姿を社内で見かけると、気になるのは、相手もこちらに気付いているのかどうか。

仕事中だからそれどころじゃなく、表情が違うので、いま近付いたらいけないんだろうなと思う。

そういう状況についてのみならず、相手がどう思っているのか、それが気になる……

私はその男性の中で、どの程度の存在になれているのか、心の中は覗けない。こんなことを思う時点で思い違いなのかもしれない。

ただ抱き合えただけでこうも勘違いしてしまう……物分かりのいい前提で行われる中年の恋と、10代20代の青春とを履き違えている。

こちらを見もしない、そっぽを向いたままの時は、その姿が頭に焼き付いて、なのにもっと好きになってゆく。ちょっとした新鮮な姿勢などを発見しただけでそれが絵画になりそっと胸の中に閉じ込めておきたくなる。

メールの返事はこない。

逢うと笑顔はだんだん少なくなり、何を考えているのかわからない。

次の約束もない。

社内で比較的近くにいても、話しかけるのが難しく、胸がかき乱される想いがする。

その葛藤がはじき出せるこちらの行動は、なるべくその人を社内では「避ける」ということだった……

本気であるほど正反対の行動でこの想いを制御するために必死なんだ。

会社の人は誰も知らない。付き合っているわけではないので、迷惑をかけぬよう気を付けているし、周囲の様子をよく見て話すようにしている。

私は社内の人とほとんど会話しない。特に女性とは話さない(女性と話すのが苦手……)。だから余計なことを聞かれる心配はないのだが、妙な噂がたたぬよう、今後も気を付けるつもりだ。

しかし、その男性のいない時は、本当につまらない。仕事はというと毎回同じことの繰り返しで……こんなことを続けて光速で月日が過ぎる間に、男に声もかけられない老いと閉経を迎えてしまうだろう。

一緒に暮らそうと言ってくれる彼氏はいるが、そんな中、気まぐれに私を抱く会社の男性に夢中とは……

私は、彼氏にこのことを打ち明けるのか。気が重い宿題で、正しい答えが見当たらない。

その男性のいそうな日は身なりをいつもより気を付けて会社に行くが、いない日はどうでもいい。

自分が今日は疲れているし汗臭いなと感じる日は、好きな人にこの姿をあまり見られないうちに早く会社を退散したい気持ちでもある……

しかし、いつも思うんだが、声のかかる距離にいても話しかけられない……

別の人と話の最中だったりすると挨拶すらできない。

空間から抹殺されたかのように、自分の姿をくらませることしか思い浮かばない。

帰宅途中の車の中で「あー今日いたなあ……」などと繰り返しながら、それだけで満足するようにしている。

気付いていないのか……こちらを見もしない。

体が女だということだけでその人を引き留め続けるのは不可能な気がしている。

その男性は肩書が付いている。私は特定の業務を任されほぼ一人でこなしているがバイトの身分なので、二人が顔を合わせる機会は少ない。

社内では遠い……

その男性に相応しい自分になりたい。

ここまで特にミスなく業務をこなしてきたが、それだけでは仕事ができる自分とは言えない。簡単なことをミスしないというのは当たり前のことでしかなくなんの自慢にもならない。

その人が、俺の女だと言えるような存在になりたいが、なれそうにない。その人との距離をこのラインで守らなければ、これ以上踏み込むと相手のためにならない、自分はここまでの存在だと卑屈になる。

付き合っているわけではないので、実質、まだ俺の女にすらなれない。自分がその人の意識をもう少し惹きつけておくために出来ることを探している。

仕事の出来る男性はとても魅力的に目に映る。

憂鬱そうな姿も、疲れている表情も、なにもかもが良く見えてくる。

社内恋愛(といえるのかなこれは……)すると良い面は、好きな人の働く姿を見れることかな……

学校に行ってるような気分だ。

手が届かないものを見つめ続ける、胸を焦がす片想いをずっとしている。

好きで好きでたまらない。

起きている間中その人のことを考えている。

なんでこっちを見てくれないんだろう……なんで休日は二人きりで逢ってくれるのだろう。なんで私を抱くのだろう……

なんで、という疑問が溢れてくるのに、あまり気安くメールを送れない、送りたくない。

面倒くさい女。重たい女になりたくない。

都合のいい女でもいい。

ただ、貴方が逢いたいと思う時に、連絡が届くのを待ち続けている。