heartbreaking.

中年の末路とその記録

並んで歩道を歩く、学生の恋愛風景を見てどう感じていますか……

学生の恋愛風景を見てどう感じますか……怒りですか、嫉妬ですか、微笑ましいと思いますか、いやそれはまだ早いと思ってますか。複雑な感情をもてあまし、彼らが並んで歩道を歩く姿を見ている。

学生時代、恋愛をできなかった。その問題は思った以上に大きい。刑事コロンボの頭脳をもってしても解決できない、難事件が学生時代に起こっていた。

それをいまだにこじらせている自分を感じるのに、二度と手に入らぬ宝石のようなかけがえのない仮定の時間の表面にすら、いまさら指先に触れることすらかなわない。

学生時代、恋愛をできなかった、大人がたとえ現在普通に恋愛をできるようになっていたとしても、それですべてが解決できたわけではなく、時効になることだってない。永遠になぞ解きをしてゆかなくちゃならない。

彼らの幸せを一瞬で破壊し吹き飛ばしてしまうほどの深い、暗い憎悪を叩きつけるとしたら頭の中でだけ。個人的に憎悪はなくても、その風景を見せる者は、挑戦状をこの記憶の中に叩きつけてきている。だから頭の中で出来るだけ残酷な方法で思い知らせても最後は、学生時代に空想の中で自己処理をしていた、夜、時々泣いていた、そんな無意味な記憶の渦に抱かれて終わる。

罰してほしい……彼らを。ちょうど間に割りこんでその仲を引き裂く、そんな、ねこぢる漫画のような光景でもたった一組の学生では1万分の1もこの心の中では浄化されていない、澱んだまま燻っている。学生の男女の頭が胴体から離れて宙を飛んでいったところで、童貞のまま大人になったヒト、なんか理由ありのためずっと恋人のできなかったヒトが叫びをあげる。そして日本中の、学生時代に恋愛できなかった、こじらせ大人へとその怒りが電波してゆく。勿論、昨今の少子化問題もあり、いまだに恋愛とは、愛とはなんなのかを問いかけ続けながら葛藤の中生きている全大人が立ち上がり次々と具体的な行動を起こしてゆく。その時がきた、時は満ちたのだ。すべての憤怒が今まさしく爆発するだろう。そして恋愛をしている学生たちの首をはねてゆく、そんなストーリーで漫画か小説一本できる。

もっともらしい理屈を通すなら、お前らその年齢からエッチなことをしてないで学生らしく勉強しろと言う。実はここが一番大きなポイントなのだけど、学生時代でセックスをしているという、その破壊的に許され難い行為について、一体何故誰も罰しようとしないのだろうか。そんなことをエロ漫画であっても表現するのは、学生時代恋愛できなかった人生を踏みにじっているのだとわかりつつも何故それを割り切って読んでしまおうとするのか。現役世代の学生達への影響を及ぼす様々なエロ情報が、結果的に学生時代に恋愛できないで呻いていたことのつらさをいまだに誰にもわかってもらえず大人になってしまった自分へと叩きつけられる挑戦状の数が増えるだけだ。

あれは事件だった。学生時代に恋愛できないでいることは、事件だった。同級生が恋愛を普通に楽しんでいる風景も事件だった。一つ一つがショッキングな出来事でいまだに頭の中に覚えている。

彼らは、恋愛をする苦悩を早くから知っていても、恋愛をできないでいる苦悩を知ることなく大人へと成長していった。

恋愛とは、セックスとは本来、そんなに簡単に手に入らないことだったと知っているからだからどうだと言うのか、そんなのは何の慰めにもならない。恋愛が実はどんな方程式を解くよりも難しい、正に選ばれし一部の民だけに与えられた奇跡なのだということを思い知らされたあの地獄のような日々、泥沼の底で泥だけ食いながらいつも溺れているような日々、そんな悲しみや事実を知っているから、今目の前にいる恋人を大事にできるというふうにも上手くいかなくて、つまらない過去話でいつも嫉妬ばかりだ。それもその人や過去の相手に嫉妬しているわけではない、学生時代から恋愛出来ていたという空気中に漂う事実に嫉妬しているだけなのだ。