heartbreaking.

中年の末路とその記録

今後どうしたいか

刑務所で長い期間過ごした〇〇〇と付き合い始めてもう2年近く経つ……

流石に人を殺していたなら付き合っていませんけど、そうではないので、まさか私を殺さないだろうということは最初から信じようとしていました(まわりくどいけど、その可能性を考えなかったわけではないです、たとえば彼を怒らせた時どうなるかということは)。

性犯罪者ではないので、そういう告白ではなくてよかった、私の中では性犯罪は、感情の部分では殺人を越えています……

殺人と、性犯罪以外の、どの犯罪だと「過去のことだ」と許せるというわけではなく、その人の作り出す人間性によって私の中での善悪の正常な判断力が上手く懐柔されるだけでその事実を許したのとは違う。だから世の中の犯罪者の周囲が必ずしも敵だらけにはならない。……まあ所詮、他人事であるしな。今更話を聞いても普段流れてくるニュースと変わらない。出逢った後に告白されても、今普通に話せていればとりあえず問題ないと判断するしかない。それ以上のことは現場を見ていないのでどうすることも出来ない。

最初はでも、騙されてるんじゃないか?って思うことも迷うこともありましたよ……

それは私が金持ってたらあり得るのかもですが、借金しかないのに、騙すつもりで近付いてきて、こんな面倒な方法で関係を長く続けるなんてことはまずないんじゃないか。

彼がいつも煙草に火を点ける姿は何処か諦めているようでもある。そんな彼の瞳が少年のように輝くのは、この懐に飛び込んできた時……丸くなるその姿はまるで小さな子供が甘えてきているように感じられて本当は抱きしめてあげたいのだけれど、上手く対応出来てない。

背中越しに彼がくっついてきている時も、私と過ごす時の安堵の仕様を感じることが出来る。信頼されているのが伝わってくるので私は動かずいつもじっとしていることでその愛に答えている。

子供はいなくても、二人の中で生まれる小さなしあわせは、ごく簡単なことから守られている。それは互いの話をきちんと聞き、その都度良いアドバイスが出来ているかどうかということに尽きる。

そして相手の仕事の努力の部分をリスペクト出来ているかどうか、それが伝わっているかということも信用に欠かせない。

彼は刑務所にいたので気遣いも驚くほどで、刑期を終えたすべての人がそうとは思えないが、刑務所は共同生活ですから、もともと気遣いの出来る人ならばそれに一層磨きがかかってしまうのかもですね。

今日は俺がお前に美味いもん食わせてやる、と時々、手料理を作ってくれるので、彼が台所に立つ姿を斜め後ろから観察していることもある。鍋の様子を見ながら、合間にこちらを見て笑顔を見せてくるので、外では多分怖い感じなんかもだけど、私の前ではかわいいなと思ったりしています。

よくあるけど、ギャップがあるほど恋愛て上手くいくんじゃないですか。

自分がもしかしてわりと幸せなんかな?と思う時があるとすれば、過去の記憶を辿ってみても素朴に思い浮かぶのは台所でのコミュニケーションかな……

勿論ここまでくるには平坦な道ではなかったので……最初の頃は意見の衝突が多かった。

一番危なかったのは、私が子連れの主婦を殺したいと思っていることを告げた時でしたが……これ以上彼に責められるくらいならベランダから飛び降りたいと思うほどつらかったです。

それについても私が何故子連れの主婦を殺したい気持ちを抱えるようになったのかという説明をさせてもらったので、無論、賛同することはないが様々な配慮をしてくれるようになった。

燃えるような恋もいいけれど、それは長くは続きません。

大事なことは、何を好きかということではありません。

趣味が共通するということも良いのかもですが、それ以上に、何が苦手なのかということを良く聞いて理解することだと思います。

相手の嫌がる情報を見つけた時に一緒にそれを避ける気遣いが出来るかどうかです。

だってそうでしょう。自分が大事に想っている人のつらがるようなものは、見せたくないので一緒に避けてあげますよね。

私も彼の前では、結婚していた時期の話などは、聞かれない限りなるべく話さないようにしています。

そんなんで、なんか兄弟みたいに気が合っているので、奇妙な偶然がかなり多くなっています。たとえば私がギョーザをなんとなく食っていた日は彼も食っていたり、唐揚げ弁当で失敗したという日まで同じで、彼曰く、これはなんかあるな……と。けして大げさではなく、別に事前に示し合わせたわけでもないのに、一致することが多すぎるんですよね……

後は彼に任せます。

彼が結婚するというならそうしますし、一緒に暮らそうと具体的な行動起こすならそうしますし、このままでいいっていうならそれでも。

結婚とか、一緒に暮らすってことは、中年になってくると、ただ純粋に好きだからとかそういうことではなく、ある程度一緒に過ごしていて、何処かで諦めが出てきてそこを終着駅にする決断じゃないですか。

いままでは実家に帰る度、父がこう言っていました。

「お前、相手はなんでもええけど、ヤクザだけはやめとけよ」

このままでは彼を父に会わせることは難しいので、私は、実家に帰る度、彼が大事にしてくれていることを繰り返し聞かせてきた。

そうすると最近は父がとうとうこう言うようになってきた。

「お前を大事にしてくれるんなら、なんでもええ」

多分、なんでもええ、の中には最悪ヤクザでも構わん、も入るのだと私は解釈した。

彼は昔ヤクザだっただけで、今は違うし真面目に働いている。

あと一押しで……彼を両親に会わせられる気がしてきた。

ヤクザに拘っていたのは父だけで(何故かというと昔、知り合いがいたようでそれについて詳しくは聞いてない)。

母はというと、ヤクザでも元犯罪者でもなんでも構わないようで、私がこれまで散々母を驚かせる問題行動(豊胸手術で行方不明になったりなど)ばかり起こしてきたので今更なにを言っても驚かない……

母は彼を気に入っている。

で、その彼はというと、私の両親のことにまで気を遣ってくれて、「これをお父さんに」「お母さんに」と、実家によく贈り物をしてくれる。

「たまには実家に帰ってお父さんお母さんにお前の顔見せてやれよ」ともよく言われるので、それで気が付いて私が実家に帰ったことを報告すると「お父さんやお母さん元気だったか」と確認してくるので、元気だと伝えると「そうか、良かったな。今度、お父さんやお母さんと一緒に何か美味しいもの食べに行こうな」と言ってくれる。

それはまだ実現していないのだけど、付き合っている人の親のために使う金も惜しむことなく出せる人ってそうそういない……

お金は……出せないですよ。

たとえ付き合っている相手でも出し渋る時がありますし、ましてや相手の親のことなど、そうそうは構っていられません。そう、皆薄情なんですよ(私も)。

別に幸せ自慢じゃないんですよ。

ただ、幸せって言いたかったり、そう言いたいうちはまだ本当に幸せじゃなくて、それがわざわざ言わなくても普通になっている状態がそうなんじゃないかなってのは思います。そんな感じで、今はお互いに仕事が忙しいんですけど、今年は一度も喧嘩することなく終わりそうです。