俺は、生ゴミほどの価値もない人間だ。持ち主に捨てられて、当然だ。誰にも必要とされていない。どしゃぶりの雨に、濡れた表皮がバチバチと激しい音を立てながら、最後の悪あがきで低脳な俗話で騒ぎまくる。
静かな夜、俺の声に気がつくのは、餓えた野良猫だけだ。野良猫は俺の体に容赦なく爪を立て、牙で引き裂き、この腐りきった内臓にニャーニャーと喰らい付く。もう痛みすら感じないんだ。まだピュアーな心だった俺の主張だけ喰らい尽した野良猫は、俺に砂をかけて闇に消える。
後に残る残骸は、今の俺の腐った根性だけだ。激しい雨に俺の内臓まで濡れて、腐臭を漂わせ…… ゴミ収集車すらも、この体を連れて行ってはくれないだろう。元の持ち主は、そんな俺を哀れみの目で見るどころか、蔑んだ目で見つめているのさ。ああ、これが本当の恋の終わりなのか。二兎を追うものは、一兎をも得ず。俺は、頑なに守り続けてきた最も愛すべき誰かの心を引き裂いた代償に、こんなに簡単に全てを失ったのか。
猫のヨダレまみれの千切れた表皮と、激しい雨にかき回されてカタチすら失った醜い内臓が、ドロドロとアスファルトに流れ出て、かつての俺は完全に消え失せたのさ。こんな醜悪な存在を遠くから観察しているのは、かつての持ち主でも、今の持ち主でも無く。俺と同じ、闇に生きる魑魅魍魎だけだ。
goo blog funamushi2 - 2005-06-16 17:38:02 コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )