heartbreaking.

中年の末路とその記録

二人の男が争う夢を見ることが多くなった……

眠りに落ちると、別れた夫と、今付き合っている人が、夢の中で、争う。

殴り合っているわけではない。目を合わせた時に心理戦をして、元夫のほうが身を引いてゆく。

夢の途中で見失ってしまった、元夫を探したいと思っている自分が、似たような後ろ姿を見る度に、心が揺れて「あ……」って思わず声が出てしまう。明らかに体型が違っていても、もしかすると太りすぎたのかなとか、痩せたのかなとか、都合よく、思ってしてしまう。頭が禿げていても、どんな姿に変わっていても構わなかった。

別れた後に、偶然の再会があり、それから大事に積み重ねてきた友情ごと終わらせた自分の罪を思うと……素直に駆け出せなくなっていた。

迷いながら、もう一度、振り返ると、その姿はなく、私は行く宛てを失い、両脚を失ったような悲しさで、元の生活へと戻っていく。

傍にいるだけで心地よく思うのに、夢の中でさえ一緒にいられない。

二人で、同じ窓から、同じ風景を見ることも。

壊れかけた窓の外に映し出されるのは、この現実とかけはなれた風景ならどれでも良かった。

馬鹿みたいにはしゃぎあった、子供のような笑顔でいられる彼を、丁寧に夢の中で復元している。壊した私が自分勝手に、貴方を投影していることを、今でも大事に想っていることを忘れないで欲しい。

覚醒している間は、浮気する気はなくて、今の彼氏を傷付けるようなことはしたくない。

だけど、あんな夢を見ては、自分の心がわからなくなる。

ただ笑顔が見たい。

夢の中で、元夫が現われ、まるで他人行儀で「どうしたんですか?」と言う。

本気か、からかっているのかわからなかったけれど、その言葉は、今こうして離れている時間の重みを感じさせた。近付くと、抱き合うわけでもないのに、離れた半身をようやく取り戻したかのように、二人の元の生活が始まっていた。

それが嬉しくて、私はずっと傍にいようとした。そんな安らぎは、長くは続かなくて、ほんの一ページを捲るくらいの儚さだった。二人でどこか遠くへ行こうと決めて、空港のロビーにいる時に、今の彼氏が現われ表情から怒りが見てとれたので、現実に気付かされた私は夢の中から元夫の存在を、消した。

夢の中で、かつて愛した人と何度でも時を巻き戻すことができるので、眠りにつく前に祈りたい。もう一度、あの夢の続きを……