heartbreaking.

中年の末路とその記録

男ってよくわからない

仕事で猫かぶりすぎてヘトヘトになってアパートの階段を昇り、ドアを開けると部屋に篭った熱気がお出迎え。台所で干す洗濯物はよく乾いている、パリパリだ。

クーラーの直下で扇風機まわすと電気代節約になる。効率よく部屋に冷気が行き渡り、あっという間に天国になる。

今日は辞めた会社の奥さんに電話かけて「今から給料いただきに行ってよいでしょうか」「ああ、どうぞ」嗚呼、会社の奥さんという存在はどこも似たりよったりで、あんましイイ気分はしねえな・・・ まあどうでもいいけど。

辞めた会社に給料もらいに行くついでにリサイクルショップに寄ってDS Liteも売り飛ばすか。DS Liteは数週間前9000円で中古で買い、そして昨日9000円で売れた。FF4遊んだけど画面小さすぎるのでつまんなかったのよ。で、前の会社で給料もらってその金で団子とアイスクリーム買って実家に寄った。ん?親が老けているなあ・・・ 心配だ。きっと俺のせいだ、俺がいつまでも独身で会社を転々と渡り歩いているからだ・・・ や、冗談で「生きてるだけで親孝行だよね」なんて言ったこともあるけど。とにかく何があっても親より先に死ぬのだけはイカンよ。俺は男遊びがしたいから一人暮らししたわけではなく、狂った俺を親に見せたくないから家を飛び出してきたんだ。目に見える場所に居ればお互い気にもなるが、目に見えなければ、見えないものを気にすることもない。

しかし、俺の親がパソコン無知なのをいいことに、Windows Home Editionの古いノートパソコンを五万で売りつけた父の旧友には心底腹が立つ。そんな古いパソコン五万で売りつけるのが友達と言えるのか。しかも壊れたのが俺の父親のせいみたいに言いやがったそうで、ふざけるも大概にしとけと怒りの電話入れてやろうかと思うほど腹が立った。ったくロクでもねえ話だ、無知な人間を騙すとはふてえ野郎だ。俺は善人を騙そうとするやつは許さない。

実家を出て、ゲーム屋でペルソナ4を買った。実は数日前に20型のテレビを買ったので。ここ最近は会社を転々としながら研修期間中の給与もきっちり貰ってきたわけですよ・・・ 研修期間中の給与も馬鹿にならないですぜ、もらえるもんはもらっとかないと。企業側も悪い噂流されたら困るから、金は出すだろう。鬼門は増える一方だが、辞めた後に何言われようが知ったこっちゃねえ、金さえもらえればそれでいいんだ。

アパートに戻り、シャワー浴びて缶チューハイ片手にテレビの前に座り、ペルソナ4を今夜は遊ぶぞー!と主人公の名前を伊藤賢治にして気分が乗ってきたところで携帯が鳴る。今晩の俺はチューハイちびちび飲みながらペルソナ4で遊びたいんだよ・・・

「もしもし」「あ、俺だけど今から大丈夫?」「あ・・・ は、はい」

泣く泣くプレステの電源切って、布団に転がっておじさんを待つことになった。来ないなあ・・・ 遅いなあ。あーもう来ないならこのまま布団に突っ伏して涼しいまんまで寝るぞ、今夜の俺はダラダラしたい気分なのだ。

ゴンゴン。あ、来た。ドアを開けるといつものおじさん。さあ、来たからには早速やるのかと思ったら、相手は寝てしまった・・・ あー、うちに寝に来たんじゃないでしょ。それとも俺が攻めるのを待っているとか?たまには攻めてこいって?でも今夜はそんな気分じゃないのさ、今夜の俺は、

やるか やらないか

の二択しか無かったのよ。やらないのなら、二人でここに居る意味ない、一人のほうが気楽でいい。別に二人の空気を楽しめるほどヒマじゃない。やるか、やらないか、なのよ。

何で寝てるのかなー?

あー・・・ うぜ。うお、一目ぼれした男に対してついにここまで割り切れるようになったとは。慣れは怖いねえ。今夜は久々に缶チューハイ飲んだからか、今夜の俺はいつもとは違うぜぇ?いくら元会社の上司とはいえ、目が据わってるだろ。

上司がようやく起きて島田伸介の出てるくだらねえ番組にチャンネル変えたところで俺のネガティヴさがついに爆発した。

「・・・・・・っ」「ん?どうした?」

「テレビ・・・ テレビの番組、特にこういうチャラチャラした番組見てると、気分が下降してるときはすごく嫌なんですよ・・・ テレビ嫌いなんですよ」「じゃあ消そうか」「・・・・・・テレビ見れないときがあるんですよ」「でもお前の過去を根掘り葉掘り聞くつもりはないけど、テレビも見れないんじゃ生き辛いだろ」「・・・」

「テレビに子供や赤ちゃんが出ているだけでいらいらするんですよ」「・・・へぇ」「子供の泣き声聞くと血が騒ぐんですよ、だからスーパーで子供がうるさいと、うるさいんじゃボケ、とはっきり面と向かってガン飛ばしながら注意するんですよ」「・・・でも子供が泣くのは仕方ないんじゃないか」「いえ、最近の母親は躾が出来てないようですからね、だから私が注意してやるんですよ」「・・・ふぅん」

「この間ここに警察が来たんですよ」「あぁ?警察?なにしに?」「自殺するなって、私の自殺を止めにきたんですよ」「あー、警察はまあ仕事だからな」「私、目をつけられてるんですよ・・・」「警察も仕事だからお前ひとりをじーっと監視したりはしないだろ」「ふふ・・・」

「私ね、実は結構有名なんですよ」「・・・は?」「あなたのことも綴っているんですよ」「・・・はぁ?」「私の人生を綴っているんですよ」「・・・え?お前なんの有名人なの?」「ネットの有名人です」「なぁんだ、ネットの、か」「・・・・・・・・・」

「子連れの若い主婦を見ると殺意が沸くから、その衝動を抑えるために薬を飲んでいるんですよ」「それは何とかしないとお前がこの先生き辛いだろ」「私は人殺しをしないために、薬を飲んでいるんです」「でもそれは根本的な解決にはなってないだろ、お前が何とかしないと」「勿論、薬は気休め程度ですけどね」

「どうです?もう会おうとは思わなくなったでしょ」「・・・・・・」「いいんですよ、もう充分いい思い出作らせてもらいました」「それより舐めて、ほら」「は・・・?」「ほら」「は・・・?」

何でか結局、最後までいたしてしまい、合体したままお互い目と目を合わせて「こんなヘンな頭おかしい女が好きなんですか」「お前、俺のこと嫌いになったんだろ」

とか、なんだか噛み合わない会話をしながら、しっかりいたすことはいたして、じゃあな!と笑顔でおじさんは去って行ったのでした。何で?俺、子連れに殺意沸くって言ったし、かなり怖い顔もして見せたけど、結局いつもどおり立ってたなあ男ってよくわからない・・・

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