ある日、このような素直な感性をもろぶつけている文章を偶然目にし、思わず立ち止まる……
普通に結婚して、普通に子供が出来て、今に至る感じ。子供超可愛い。お風呂とか楽しい。新しい扉を開きそう。
小説:大学院を留年して冴えなかったオレに天使のような恋人が出来て人生変わったワロタ。 (団劇スデメキルヤ伝外超)より一部抜粋
嗚呼、世の中の、嫁や子を持つ男は皆このような喜びを得たのだな…
そして私は夫に、このような当たり前の幸せすら与えることができなかった…、この自分は一体なんなのだろうな… と反省した。
鳥は、鳥かごの中から外の世界に憧れるばかりで、愛してくれる人間の想いを深く考えなかった… ただ自由を得たいだけで大空へはばたいた。けれど結局どこへも飛ぶことなどできやしない… 夢を見すぎていた。今はもう一度鳥かごの中へ戻り、あの愛を取り戻したい。
別居の道を選んだ私はおそらく、さげまんなのだろうと心の中でがっくりしながら、この方の文章をブクマした。すると後日以下のような返答をいただいた。
id:kuroihikari江。フィクションです!!!!独身です!!!!…というか、絶対に勘違いされないように記事のタイトル『小説』って入れておいたのだが…。
id:yarukimedesu さんは現在独身でこれは創作物だったらしい。けれど、もともとネット上に漂う文章など、本当なのかどうかはわからないので無問題です。創作であっても、作った人の中にある想いは作品へと反映されているはず。
鬱・真っただ中だったオレを、カタギの世界に引き戻してくれた。天使。まさに天使。
心を打たれたキーワードは「天使」だと感じました。…この方の文章を読んだ後で、楽しかった日々の思い出がよみがえり、目の中に涙がたまっていました。
私が台所にたつ度に、いつも背後にきてそっと抱きしめてくれる夫がどんな想いだったのか… そんなことすら、忘れていた。
本気でひとつひとつの楽しかった記憶を思い出してしまったなら…… 毎日、ことあるごとに目に涙を浮かべながら生活していなければならなくなる。
齊藤貴義 @miraihack 昨日は精神的に詰んで、あまりにも具合が悪く、食欲がなく、嘔吐や水下痢が続いたので、元妻に電話を掛けて助けを求めてしまった。正露丸を買ってきてくれました。そして部屋や台所やトイレの掃除をしてくれた。縁を切ったはずなのに呼び出してゴメン。この借りはいつか必ず。
夫婦ってのは、そういうものなんだな、と気付いていても、別居してしまえばそう簡単に生活は変えられない。だから一緒にいられたはずの時間の価値に気付くのは、自由を手に入れた後で、だけど離れなければこんな想いには気付けなかった。とにかく、引越しはエネルギーを大量に消費するので…、過ちに気付いて・戻りたくてもすぐには戻れなくなる。
貴方は今、何を食べて暮らしているのか…
「今日は何が出来るかな?」と嬉しそうにたずねてくる貴方に、「今日は回鍋肉だよ」「今日はチキン南蛮」「今日は手抜きだけど、肉うどん」と背中を向けたままで答えると、「ふーん、楽しみ」と貴方は本当に幸せそうに笑いながら抱きしめてくれた、その笑顔や重なるカラダの感触を忘れたわけじゃない…
夫の好物はチャーハンとラーメンのセットだったので、チャーハンを作りながら、麺がのびないようにタイミングをはかるのが面倒だったけど、夫が「まだ?お腹すいたよ」と子供のように待っているので、苦には感じなかった。
……私は子供が結局出来なかったけれど、子供に恵まれた女性たちはきっと、こんな幸せを毎日のように感じていられるのだろうな…
「お母さん、ご飯まだ?」
そんなことにすら、独身を貫く女性たちは気付きもしないで、専業主婦や扶養範囲内を選ぶ彼女たちのために税金を納めているけれど、守られなきゃならないのは、一生一人で生きてかなきゃならないアンタたちのほうだからね……
ポテトチップスの袋をガサガサと開く音がするたびに、夫がやってきて袋をまるごと奪い取るので、もーう!やめてよー!と追いかける私を夫はハハハと笑いながら身をかわすので、体にしがみついて非難し続けた。何度奪い返してもまた同じことを馬鹿みたいに繰り返すことになるのでとうとう根負けして「もう仕方ないなあ… じゃあ半分あげるよ」と渋々お皿に盛って分けてあげてましたが本気で怒ってるわけじゃなく、二人は笑顔でした。(もう!ばっかり言っていた気がする)。
離婚届けを出すかどうかで、テーブルを挟んでいるときも、夫はやせ細った顔をして(私のせいだ) 飲み物しかとっていないので、私は一旦口にはこびかけていたトーストを途中で皿に戻して「半分食べる?」と言いながら分けてあげたときに「うん」とうなずいてくれた。食べ物を分ける幸せも今は捨ててしまった…… 目の前でもぐもぐ食べるいつも通りの夫を見ながら、心寂しく感じていた。
カップ麺に湯をそそぎ、わくわくしながら3分経つのを待ち、ちょうど時間になるころに、きまって夫がやってくる。カップ麺と箸を、私の手から奪いとり、最初の貴重な一口を(…しかも、ものすごい量の麺を) 許しもなく食べてしまうので、私はやはり、もーう!なんでー!と夫からカップ麺を奪い返すのに必死でした。やはりその時も、二人は笑顔でした。
離婚届けをどうするかの問題はまた今度考えることにしよう、という結論になった後は雑談をしていましたが、「ずっと、そんな感じでいてくれたら、ぼくはそれでいいんだよ」と言われたので、夫も、いつまでも天使のような嫁をのぞんでいただけなのかもしれない。
夫婦仲が上手くいっていた頃は、独身者の方が思い描くとおりの、幸せな夫婦だったと思います。ただ一つ、子供がいないことをのぞいては…… 結婚は、やはり、いいものです。
いつからか、そんな幸せも過ぎ去り、すべてが当たり前になってきた頃、夫がかねてから好きだったドラクエシリーズの最新作がとうとうネトゲで登場することになり… そこから、会話が激減したような気がしています。夫が初めてドラクエ10を開始した日に感じた恐怖は今も忘れていません…(それについてはまたいつか語るかも)
夫と最後に会った日(12月半ばでこの記事を出した頃)、まだ私の想い出を捨てられずに持っていることを告げられて、何故かものすごく悲しく感じてしまいました。
だけどそれは私も同じで、二人の想い出の写真を捨てることができずに残しています。夫に買ってもらった、ぬいぐるみは全部ごみ袋に詰めて生ゴミの日に捨てたのに、何故かそのぬいぐるみすらも、もう二度と戻ってくることはないのだ… と思うと、ものすごく悲しくなってきます。どんな想いで、ぬいぐるみをわざわざ選んで・プレゼントしてくれたのか… それを考えると…
私は子供が一人は欲しいのですが、5年以上夫と暮らしたほとんどの年月は、すれ違いで過ぎてゆきました。セックスレス状態のままで同じ屋根の下に暮らし続けるのは、なかなか辛かったです。普段はそれを辛いと思わないように趣味に没頭することで忘れようとしましたが、子供のいる夫婦ばかりであふれかえるマンションの中では、子供に恵まれない私の居場所などどこにもありませんでした。
二軒先の主婦といつもエレベーターで偶然乗合わすことが多かったのですが、小さな男の子を二人と、さらに新しく産まれたばかりの赤ちゃんをベビーカーに乗せているので、そんな風景を見せられるたびに、私の心は病んでゆきました。
その極限状態に出した記事がこちらです。
こんな私の心の叫びを、消さずにいてくれる、はてなの会社には本当に…… 心から感謝しています。
私は、人の心を殺すのは、乱暴な言葉だけではないと思っています…
人の心を殺すのは、誰かの幸せな風景や、言葉なのです… 今こうして文章を打つ私もまた、結婚したいけれどできない独身者たちの心を傷つけている…
幸せをわざわざブログで語る人々は何を考えているのだと憤慨していた頃もありました。過去に私が、批判してブログを閉鎖に追い込んだこの人も、ただ自分と似通う状況に生きる人に想いを受け止めてほしかっただけかもしれない。
だけど現実世界の人々はそうではないのかもしれない。現に私も…… だから気をつけてほしいし、気をつけたいと思う。…ネットを離れ、家から一歩出ればそこは心の戦場なので、防御する装備を身につけてください。