円形脱毛症(二度目)になってから1年以上経つが、まだ治ってない。生える時期は人によって違うようだ。俺の場合は時間がかかるのかもしれないが、元の状態に戻れたなら仕事も恋愛も、がんばれるんじゃないかという希望だけを胸に、耐えてきた。
頭皮を見ると産毛は生えているので、自然回復への希望を捨てることができない。毎日、産毛にむかい語りかけている、いつ本気を出してくれるんだ、そろそろたのむ(まさか、このままあきらめるつもりじゃないだろうな……)など。かなり真剣だ。
どくだみ茶、豆乳飲料を飲んだ時期もあった、そして今は、きなこ牛乳を作り毎日飲んでいる(冷たい牛乳に、きなこと砂糖を適量入れて、よく混ぜる。普通に牛乳を飲むよりも、飲みやすい)。
出かけるときは、①スーパーミリオンヘアーの粉をハゲた部分へふりかけて、②粉が定着するスプレーを吹き付けてから出かけている。乾くのを待たずとも、周辺の髪をかきあつめてハゲている部分に被せておけば、至近距離でなければわからない(とおもう)。ただ、毎日のことなので、このちょっとした手間が徐々に精神的にきている……雨の日や風の強い日は黒い粉の定着力が不安で気分が落ち着かない。帽子を被る仕事でも、それを脱いだ後に髪が乱れていると、その部分ばかりを手でいじりながら、人の話も頭に入らなくなるほどだ。ウィッグはあるのだが頭が締め付けられるのがどうにも慣れなくて、自分が自分でなくなるようで無理だった。結局、安価でできる「隠す」方法の中ではスーパーミリオンヘアーが優れているだろうとおもう。
冬はシャワーを浴びるのは二日に一度で十分だけど、黒い粉を頭皮にはりつかせたままでは落ち着いて眠れないので、寒くてもほぼ毎日シャワーを浴びることになる。粉はお湯を浴びながら頭皮を軽くこすっていると1分以内(ごめん、もうちょっと時間かかる)にはすべて溶け落ちるので(自分の場合は範囲が狭いからなのだが、広範囲であるともう少しかかるとおもう)、落とすのはそんなに大変ではないが、いつまでこんなことを続けるのか……ハゲの人たちのさまざまな苦労の一端を感じる。
世の中には、ハゲをネタにしたり馬鹿にする人が大勢いる……でも、自分がハゲの仲間になると、ハゲを面白おかしく扱おうとする人々の心が如何に幼稚で、しょーもないかがよくわかるようになる。好奇心に、大人独特の邪心を加えた、かなり性質の悪い冗談を言っているのを、いままであちこちで見てきた。自分が言われたわけではないが、なんとなく不快だった。そうした人はリアルに限らずネット上にもいるけれど、ハゲを面白おかしく扱える自分アピールをするよりも先に、それを見たハゲがどう感じるのかを想像すれば、言えなくなるんじゃないかな……
人に対する見方も少し変わってきていて、たとえば尊敬できていた人でも、その人が誰かのハゲをネタにしたり馬鹿にしたりしている姿を見てしまうと、しょーもないことをまた言っているなあとおもうし、もし自分のハゲを見せたらきっと陰口を言うんだろうなとおもうと、あまり関わらないほうがいいなあとおもうようになる。石を平気で人に向かってぶつけることのできる人は、どうにもならないことで挫折をしたことがないから、石をぶつけられた人の気持ちには気付けないのかもしれない。
最近、リアルの知り合いの男性に久々にお会いしたときに、驚いたことがある……前回会ったときは確かにハゲていたようにおもうのに、髪の毛が生えていたので。もしかすると、植毛か、なにかの治療をしたのかもしれない。だけど、それについて尋ねる勇気などない。勿論、そのことは悪いとはおもわないし、この人も、表には出さないけれど密かにハゲていることで苦労していたのだな、とおもうだけだった。
スーパーミリオンヘアーは円形脱毛症を隠すのに効果絶大なり。最悪このまま治らなくても君も私も生きてゆける。(2015-08-31)