しんどい…
何かやることあるかと聞かれれば、のろのろと起き上がり、とりあえずセックスでもしようか、と答えるだろう。三度の飯よりセックス、でもセックスより睡眠… という感じの毎日です。
実はあまり乗り気ではないときのセックスのほうが、毛だるげで、色気はあるらしい… ただあるがままの、素の自分を解放すればいい、それだけで女は充分魅力的なのだ。
気分が乗ってきたら、気の向くままに主導権を握り、自分が気持ち良くなれるように貧欲に快楽をむさぼればいい。
自分だけがラクをして都合よく気持ちよくなろうなんて、世の中そんなに甘くない。自分も限界まで体力を振り絞り、二人で一緒にこの「時」を駆け抜ければ、もしかしたら自分が死ぬ直前に思い出すのはこの夜の思い出になるかもしれないじゃないか…
そうして嫌な記憶を塗りつぶすんだ。…男は顔じゃないぜ、セックスのテクと、片手にはいつも煙草持って渋いツラしてればいい。そして時々、笑え。それだけで男は魅力的なんだ、男の顔はそれなりの人生歩んでくれば歳相応にイイ顔になってくるんだ。
男が運転する車の助手席に乗るのが好きです。時々ちらちらと相手の横顔を盗み見ると、複雑な悩みを内包しているような気難しい表情をしていて、それが妙に萌える…
片手には煙草で無言でラブホに向かっているから、私は一生懸命話しかけるのだけど、すると言葉少なめに「うん」と答えてくれる。煙草が切れると、すこしへしゃげた箱を振って、しゅっ… っと伸びた一本の煙草を口に銜えるとおもむろに火をつけてフーッ… と煙を吐きながら遠い目をする。
片手でハンドル切りながら煙草の煙を吐く横顔。前髪が少し垂れていて顔が幼く見える。
た ま ら ん 。
俺は今付き合っているおじさんに、何だか離れられないほど強烈な魅力を感じています。男は煙草だ、煙草を切らすな。
「今日お金持ってなくて… 500円しかないんです」「いいよ俺が出すから」
この人は気風が良い。財布をぽんと寄越し「これで好きなもの買ってこい」と言うのだ。金にはあまり興味なさそうな雰囲気で、ラブホに入ったときに私が「わあ… この部屋高いんじゃないですか」と気を使うと、「そんなのはどうでもいい」と冷たく言い放ち煙草に火をつけてフーッ… と天井を見上げるのだ。
せっかくラブホに来たのに、何だかつまらなそうだ。別に休憩をとるために来たわけでもないだろうに。設備の整いすぎた、だだっ広いラブホの部屋というのはただ途方に暮れるだけで幾ばくかの時間が過ぎてしまう。むしろベッドだけに占領された狭い部屋のほうが自然に事に及びやすい。
そういえば俺の部屋に来たときにいつもこんなやりとりがある。「すみません、片付いてなくて」「いいよ別に」「なにもない狭い部屋ですが」「なにもない部屋なら、することは一つしかないだろ。おいで」「はい」こんな流れになりやすい。それにつけても…
-なにもない部屋ならすることは一つしかないだろ-
一つ一つのセリフがいちいちカッコイイなあこの人… 男はモテたければ一つ一つのセリフにこだわりを持てばいい。
ラブホから出た後の車の中は、妙に会話が弾む。「楽しかった?」「うん、楽しかったです」「じゃあ、また行こう」「はい」 いいなあこの雰囲気。ラブホを爆破しろとか言ってたの誰だよ…