heartbreaking.

中年の末路とその記録

美容院など、あらゆる店に存在するキッズスペースが、子供のいない人間の心を不安にさせている

 ※ 記事タイトルを変えました。

半年、髪を伸ばし放題だったので、昨日の夜のうちに行きつけの美容院を予約しておいた。

その美容院は静かな店だったので、気に入っていた。店内は静かなクラシックが常にかかり、座れる席は少ししかない。俺の住む田舎はとにかく美容院がたくさんあるので(田舎だが美容院の激戦区なのだ)、選ぼうと思えばいくらでもイイ店があるが、とにかく静かな店を選びたかったのだ。それだけで決めたといっても過言ではない…

俺にとって、静かな空間というのは、それだけ重要なポイントなのだ(これから店を経営したい人は、是非とも参考にしてほしいところだ)。

だが、そのお気に入りの美容院に近年、新しく入った美容師がかなり賑やかな人で、しかもその人は子持ちであり、子供好きなオーラ全快なので…、この人が入ってきた頃からだんだん嫌な予感がしていた… 

嫌な予感を象徴するのは、店内にいつのまにか作られていた「キッズスペース」で、知らぬ間に、子供を招く気満々な店へと変貌していた。あの、キッズスペースの存在が俺の心を不安にさせた。もし、俺が髪を切っているときに、キッズスペースで遊ぶ子供の話で盛り上がろうとする主婦が来ていたら……

でも、まあ、店が開店する時刻に予約を入れておいたので、店は静かだろうと思っていた。まさか土曜日の朝一番から、子供がいる主婦が美容院にくる余裕はないだろうと思っていた(いや、願っていた)。

店に入ると、すでに一人の中年女性が座っていたが、店内は静かだったので内心ホッとしつつ、いつも通り挨拶をし、控えのソファに座った。お気に入りの店を利用する場合にも、いちいち子供連れがいるかどうかを気にしていなければならないなんて、しんどすぎる…

ところがどうだろう…

俺が店に入ってわずか数分で、幼女を連れた若い主婦が「いきなりごめんねー、この子の髪切れるー?」と店に入ってきた。子供好きな美容師と、いきなり会話が最高潮に盛り上がっているようで、まあでも、このくらいのことは一応想定していたので、俺は雑誌を見ながらスルーすることにした。

幼女は可愛らしい声で「今日○○に遊びに行くんだー♪」と、はしゃいでいる。まあ、俺も小さい頃はだいたいこんな感じで親にあちこち連れていってもらったので、それが普通だからな、子供を虐待するような親もいるくらいだし、この幼女は幸せそうで、よかったな…

その幼女連れの主婦が俺の待機しているソファのわずかな隙間に図々しくも座ろうとしているので、店の人が別のソファをすすめているようだったが、俺はその主婦の姿は一切見ずにうつむいて雑誌しか見ないようにしていた。お前には関わらない!という無言の意思表示をしたつもりだ。子供が生まれると、女は色々と図々しくなるもんだな… 事前に予約も入れず、店内にすでに客が待機している状態でも、わずかな隙間にグイグイ切り込んでくるあたりが…

ソファで待機する俺に、鏡の前にどうぞと、店の人が移動をすすめるので、俺は鏡の前に座り、またうつむいて雑誌を読んでいたが、どうにも嫌な予感はぬぐえなかった。「オーラ」がメディアで流行だが、この時の俺には店内全体を覆う不穏な色合いのオーラが見えていた。

すると店の人がいきなり俺に「赤ちゃんできましたか?」と聞いてきたのには仰天した。なんで、いきなり、赤ちゃんの話を俺にふるのだ?

子供のいるやつは年齢関わらずどいつもこいつも、子供のことしか頭になく、それしか話題がないのか!?と思いつつ、「いえ、うちはまだです」と答え、俺はとにかく雑誌に没頭することして、店の誰とも口を利かず、さっさと髪を切らせて、用が済んだらわき目もふらずとっとと出ようと考えた。そしてもう二度とこの店にはこない、それでいいじゃないか。

まるで息をするように、子供の話題を他人にふるのはやめてくれ…

俺が静かに雑誌を読んでいる間中、幼女はお母さんの近くではしゃいでいる(まあ、幼女そのものは可愛らしいので構わないとしよう)。お譲ちゃん、とても幸せそうでよかったな… 私と二人きりなら、お菓子とジュースでも買ってあげるのにな…

(※ 私は幼少期に従兄弟に性的暴力をふるわれて監禁されていたが、幼女を同じように痛めつけてやろう!などとは思わない。それがどれほど苦しいものかよく理解しているからだ)

突如、店に一番最初に入っていた中年女性が「おたく何人目なの?」と口を開きだした。すると、それを皮切りに、うちの娘は何人目の子で今は何歳、うちは何人目、という、子供がそれぞれに何人いるのかの話題で、狭い店内が持ちきりになり、俺にとっては不快極まりない空気の中、突然、新たな子供の声が店内に入り込んで、いつの間にか狭い店内に子供が二人になり、そしてまた新たな若い主婦がはいり(腹の大きな妊婦)、店内は、あっ!という間に、子供のいる主婦たちが子供話を繰り返すばかりの雑談スペースへと変わっていた。

子連れ主婦が一組なら、まあギリギリ我慢できるが、子連れ主婦が二組になったらもう無理だ。

「そう、がんばって産んだの」「お腹大きいね」「○○さんとこの子はもう○年生よね」「うちの孫は○年生よ」

なんだ…?ここは、ただの美容院だよな?それが何故、子供のいる主婦たちの子供の話で埋め尽くされているのか。さわさわざわざわ… 俺の心はざわめいた。

俺も美容院はあちこち利用してきたが、こんな状況になるのは初めてだったので(美容院内で俺以外ぜんぶ子連れ主婦や子供であふれかえる状態)、、、今、ありえない状況になっているなと思ったのが、かえって俺を冷静にさせた。おめーら、うるせーんだよ!と、いきなり立ち上がって怒鳴り散らすのは、店の経営に迷惑をかけると悪いので、店の人に「気分が悪いので帰ります」と伝えて俺は店を出た。

誰が悪いというわけでもなくて、子連れの主婦共はただ単に子供の話をしたくてたまらなかった、そのためにちょうどいい場所を見つけた、だから盛り上がって楽しかった、それだけなのだろう。誰も、わざと子供のいない俺を痛めつけるために、そんな話を繰り返していたわけじゃない… ただ、俺の心はとても惨めだった………

子供のいない俺が、子連れの大人たちの作り出す空気に心が押しつぶされ、破壊されて、立ち上がれなくなる前に、自分からこの場を出てゆけば済むだけだ。そして、こんな場所には二度とこない、それでいいのだから。

幸せなやつらにはわからない。どんなに話してもわかるはずないのだから、話す必要はない。ただ、黙って去るだけでいい。

俺はただ髪を切りたかっただけなのだが、子供のいない俺には、髪を切る場所すらもあたえられないということなのか?誰が俺からそのスペースを奪ったかというと、それはもちろん、子連れの主婦共だ。俺はただ、静かに過ごしたいだけ、それすらも構わぬ夢だというのか… 仕事上ならば子供がうるさいのも許せるが、今、俺は完全にプライベートな時間で、戦場にいたいわけじゃない。それが、俺の近辺に子連れの主婦が存在するだけで、穏やかだったはずの心は急に戦闘モードに変わらなければならなくなる。何のために戦うのかというと、それはすべて、俺の心を守るため。まず盾を構える、そして心が張り裂けそうな状態ならば剣を振り下ろすだろう。俺だって戦いたいわけじゃない。

何度も言うが俺はただ静かに暮らしていたいだけ!

今、無職なので酒は飲むまいと思っていたが、今日は酒を飲まずにいられない気分だ。何でそんな小さなことで?と笑われるかもしれない。だが、今回に限ったことではないのだ。世の中の大多数の大人は、まるで息をするかのように、さも当然であるかのように、他人に平気で子供がいるかどうかの話題をふってくる。子供はそんなに簡単な問題じゃない!つか、そんなに簡単に作っていいものじゃないんだ!

糞っ…

子供がいないとこんなに惨めになっちまうんだぜ… と、今の若い奴らにいちいち教えてやって、そいつらが早々と子を成すことなんか願ってないからな!俺はお前らの反面教師になんかならない!

何が悪いかって?俺らの世代には情報が決定的に欠如していたことがすべての原因なんだ。俺が若い頃は、35歳すぎた女は妊娠力が低下するような情報がネットにあふれることもなく、危機感を抱くなんてことはなかった。俺は今の若い奴らが早々とそうした情報をネットから入手して、早々に対策を打ってしまうのが気に食わない。正直言うと、全員俺みたいに手遅れに近くなって絶望味わってもだえ苦しめばいいと思っているよ…

嗚呼、酒を飲んで、ロックを聴いているとだんだん気分が戻ってきたゾ。

今日の俺みたいに、もしも、仕事以外のプライベートな場所で、自分が苦手な存在ばかりにとり囲まれてどうにも息苦しくなったなら、とりあえずその場を出ることが第一だ。絶対無理すんなよ?後でだんだん頭おかしくなって犯罪犯しちまうからな… とにかくその場は無難な言い訳でも作って出ることだ。傷つけられた俺だけが出ていって、傷つけた奴らは平然と笑いあっている、こんな状況は惨めでもあるが、それでも一番大事なのは自分の心を守ることだろ?

そして酒が飲めるなら、とにかく酒を飲めよ…

今後は、とにかく、子連れの主婦を見なくて済む時間帯に行動することにしたよ。たとえば思いっきり早朝とか、深夜とか。

俺はとことん闇の中に生きるぜ…