警察が来たのは確か、夜7時前後だった。俺の部屋の窓から明かりが漏れていたので、中にいるのだろう!と決め付けて執拗にドアを叩いていたらしい。中に居るくせに何で出ないんだ!居留守を使うな!という態度だった。
外が暗くなってから来たのは、部屋の明かりを確認する意味も含めてだったのか… でも明かりがついているから中に人が居る、とは限らない。
俺の場合、物騒なので夜中に留守のときでも部屋の電気をつけて出るときが多い。もし俺が留守の夜に警察が来ていたら…?と思うとゾッとする。やつらのドアの叩き方は尋常ではなかった、ガンガンガンガン!が一度や二度ではない100回近くドアを殴られた… ものすごい音だった。
疲れて帰ってきたらドアが壊れていた!なんて最悪。俺のプライバシーは?それもありえなくもない勢いだった。
俺には借金がある。しかも今、妻帯者と不倫をしている。借金がらみでヤクザが来たのか、奥さんの仲間が俺を脅しにきたのか… とにかく気が気じゃなかった。
殺 さ れ る
と思った。俺は今日死ぬのか?とマジで怖かった。警察に脅されたんだよ… 逆に訴えていいか?ドアをガンガン殴られ続けたときの恐怖は言葉ではうまく言い表せない。安いアパートのドアは音がすごいんだ…
ちょうどその日は、裸で布団の上に転がっていたので余計にあせった。せめて服を着ていればもうすこし落ち着いていたのだが… 腹をくくってコリラックマのぬいぐるみに無言で別れを告げ、急いで服を着て台所に勢いよく飛び出した。
ガンガンガンガン!
「なんじゃこらあああ!おどれガンガンうるさいんやぼけぇ!なめとんかおどれ、ころすどぼけが、ああ?なんのようじゃ」「○○署のものですがー」「ああ?警察がなんのようじゃ、やくざちゃうやろなあ、殺しに来たんか!?」「ドアを開けてくださーい」「ドアをあけろやと?開けたら殺す気なんやろが、開けるわけにいくかぼけが、帰れ!人様の家のドアガンガン叩いてただで済むと思うなよおどれ」「○○○○さんのお宅ですよねー、警察ですがお聞きしたいことがあるんですお願いしますドアを開けてくださーい」「なんのようじゃと聞いとろうが!ここで用件言わんかおどれ」「だからここではお話できないことなんですお願いします」「なんで言えんのじゃ、聞こえるからここで言ってみい」「ここでは言えないことなんです」「ああ?なんで言えんのじゃ」「ですから…」「しつこいんじゃぼけ、ほならおどれの住所氏名をいわんか!いわんと開けんぞぼけ」「私ぃー?私は○○町の○○ですー」「フルネームでいわんか!」「ええ?よく聞こえないんですがー」「とぼける気か!」「信用できないなら署の番号×××に電話して聞いてみてくださいー」「おおしわかった、今から確認するから待っとれよ」「はいー」
ぷるるるる…
「はい○○署です」「○○いうもんやが、今日アパートにおたくの署に所属する○○いうもんが来とるんやが、○○いうんはほんとにおたくにおるんやろなあ?えらいドアをガンガン叩くんやが」「あー、今日そちらに○○は伺っていますよ」「ああ?なんのようや、人様の家のドアガンガンガンガン叩いてこっちは迷惑なんじゃが、電話で済ませれんのか?」「話はすぐ終わりますので、中に入れて話を聞いてやってくれませんか」「何の話や、こっちは女の一人暮らしやから夜中に物騒やから入れるわけにはいかんのや、電話で用件済ませれんのか?」「話を聞いてもらわないことには、その者たちは帰れないので中に入れてあげてください」「…すぐ終わるんやろうなあ?」「はい」「…わかったわい」
がちゃ。
台所に入れたおじさん刑事の調査書を覗くと、俺がgooブログで弱音を吐いていた以下の文章が「印刷」されていた。
…
2008-06-11 09:12:24 | 雑記
自分が気持ち悪い
本当の俺に近いのを見せられるのはおじちゃんだけ。
死にたい
多分月末までになにかがおこるか
なにもなければ静かに死んでる
…
2008-06-11 09:04:52 | 雑記
死にたい
多分、月末までに首くくります
誰も電話しないでくれ
電話はいらん
電話こわい
おじちゃんいがいの電話でないからな
「この中に、おじちゃん、っていうのがあるんですけどね(微笑混じりで)」「あー… ああそれは… えー(そんなの答えられねえよ)」「……。秋葉原の件もありますし、とにかく自殺はよくないので我々はそれを未然にふせぐためにお話を伺いにきているんですよ」「あー、ああそれはご苦労さまです… 私は死にはしませんよ。いちいちネットの発言気にしていたらキリがないじゃないですか」
来てくれた二人の男のうち、おじさん刑事のほうはもしかして俺に気があったのかな。わたしもおじちゃんですがよければお相手しますよ…?って意味も言外に含ませていたのかな。ふーんこの子はおじちゃんが趣味なんだ、私もおじちゃんですよって言いたかったのかな。
台所に二人の男を招きいれて、このまま俺が犯されてもおかしくない状況だ。「おじちゃん」というフレーズが出てからは、台所に微妙な空気が生まれていたので、おそらく三人の脳内は同じような想像が一瞬でもよぎったに違いない。
最後に玄関口でしまりかけたドア越しに「では戸締りはしっかりなさってくださいね」とおじさん刑事が言ったので、一応頭は下げておいた。ドアを殴ったのがこのおじさんか、若い男なのかはわからないが、ただ署に早く戻りたかっただけなのだろう。
kanoseさんのブコメで紹介されていた以下の記事
これを読むと、警察は「今年は自殺しかけていた人たちを、○○人も保護しました!」…と数値で実績を残したかっただけなんじゃないか?と疑ってしまう。まさか俺も今年保護した一軒に含まれるんじゃないだろうな?嗚呼そのための事情聴取だったのかorz
つーか俺は別にお前ら警察に「保護」されて「自殺を思いとどまった」わけではないんだが… 警察が来ようと来まいと、俺が選ぶ結果は変わらない。
警察の事情聴取くらいで自殺を思いとどまる人間がどこにいる。精神科や心療内科の医師でもなければ、カウンセラーでもないくせに、なんで警察が自殺を止められるんだよ。
寄越す人間が違うだろうが… 自殺予告するような病んでる人間の家に送りこむべきなのは、優秀な医師かカウンセラーだ。
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