heartbreaking.

中年の末路とその記録

元夫とやり直せそうで、でも、やり直せそうにない

元夫と徒歩3分くらいの近所に住んでるけど、離婚してから、まったく連絡もとらなかったし、もう友達にすらなれないと思っていた。それが、3か月前、買い物中に偶然再会して、メールが届いたときに嬉しくて、仕事の休憩時間に泣いてる自分がいた……それからは、結構頻繁に会うようになってしまった。会うだけではなく、たまに抱き合っている。

何故か今は、お互いがその存在を必要としていることが感じられたので、それで、時間の合うときは一緒に過ごしている。

特に最近は、ポケモンGOで散歩する連れがほしくて、元夫がちょうどよすぎて、、暇があれば一緒に歩いてる。一人で淡々とボール集めも楽しいけど、共通の話題で盛り上がれる仲間と、お互いの成果を報告しあうのが楽しいゲームだと思うので。GOの配信がスタートして間もなく、「ピカチュウゲットだぜ!」という勢いのあるメールが届いたので、気分が若返った元夫に妙に惹かれてしまったのもある。

元夫は寡黙なほうなので……、こちらのほうがつい、おしゃべりになってしまう。歩いてる間、ほとんどしゃべってるの私だけ……最後には喉が枯れてしまう。例えばこんな感じ。

「あのさ、強いジムの一員だったけど、今日、赤チームの仲間の下剋上にあってジムを追い出されたよ。つーことは、真の敵は青チームじゃなくて、赤チームの仲間でレベル高い人らだったのよ」「時代は変わったんだよ」「仲間からの下剋上にあって、排除されたんだよ、ひどいよ」「そんなもんだよ」

元夫は、時々、ヘンな溝に足をとられてよろけたりしつつ、律儀に相槌入れてくれるから、昨日も暴走しすぎてしまった。

「あ、それと、ひかりTVでミュウツーの逆襲があったから録画してるけど一緒に観ない?」「嗚呼、それ評価高いみたいだね」「そうなんだよ、最後にミュウツーが名言放つし、同じポケモン同士が傷付け合うところなんかすごい泣ける」「ふーん」「あ、それと今日観た、ピカチュウのもりっていう話もすごい泣ける、それも観ようよ」「そんなの、観ない」「え、ピカチュウかわいいよ」「うーん、観ない」「どんな話かというとね、ピカチュウがいっぱいいる森で、サトシのピカチュウが……」「うーん」「……それで、サトシはピカチュウはやっぱり他のピカチュウたちといたほうが幸せなんだって、ピカチュウのために自分は別れようとするけど、でもピカチュウはサトシを追いかけてきたんだよ、もう、感動して涙が出たよ、だから観ない?」「ピカチュウ興味ない」「えー、好きなポケモンなんかいないの?」「いない」「好きなポケモンいないのにポケモンGOしてんの?」「別に、いいんだよ」「えー、何が好きなの?あ、あのハムスターでしょ、ラッタでしょ?」「もう、いいんだよ」

あー、一人でしゃべりすぎて疲れたな、と思いつつ、卵9つ集まったから、一旦お互いのマンションに戻ってシャワー浴びてすっきりしたら、また一緒にだらだら過ごす約束をした。ピンポーンて鳴って、あいよーってドア開けると、入ってくるから、なんかチューハイ飲んだりしてどうでもいい話してる。

お腹が減ったと言い出したら、チャーハンか、うどんか、なにがいいのか聞いてから台所に立ち、元夫のためにせっせと料理を作っている自分がいて、奇妙な感じだなと思いつつ。

再会して間もない頃、「今の君が一番いい」って、そう言ってくれたけど、今の私が、昔より良くなってるのなら、どうして、ただ会うだけで、肝心なことを言ってくれる気配もないのだろう。

やり直すつもりもないのだとしたら、何のために、会ってるの。

ダークソウル2も、元夫が、薦めてくるから、最初はどうなんかとおもってたが、やり始めると止まらなくなってきた。自分が薦めたゲームにハマってる人間見るのが楽しいんだろうか、私が、剣を振り回している最中に、後ろから抱き着いてきて、両手で胸を揉んでくるので、なんぞこの夢に見たような恋人同士のイチャイチャ風景はよう、と思いつつ。ついでに聞いてみた。ねえ、胸大きくなった?……すると、うん、微弱に大きくなった、という答えが返ってきた。

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私は元夫が、後ろから甘えて抱き着いてくるのが好きだったし、冗談でお尻を叩かれるのも楽しかった。私が子供の頃によく、母のお尻を叩いて遊んでいたように、今は自分がお尻を叩かれてるのが、なんだか幸せを感じた。

なんでもいい、触れ合っていたいだけなのかもしれない。セックスしなくても、ただ、じゃれあうだけでも心は充分満たされる。だから本当はずっと、くっついていてほしい。

だけどそんな心は見せずに、なんでもないというそぶりでゲームに没頭するふりをしてみせた。すると、「どうせそのゲームにもすぐに飽きるよ、君はそういう人なんだ、僕は知っている」と繰り返し始めたので、二人しかわからない悲しい記憶を、今は冗談に変えて昇華しようとしているのかと思った。

「君はなんでもすぐ飽きる。僕は知っている」と、酔っ払いながら背後で繰り返す。ゲーム以外でもそうだということを伝えようとしているのか。

「どうせ、ボスに勝てないから、もうやめるとか言い出すんだよ、君はそういう人なんだ」

「あー、もう無理だっていいだして、途中で投げ出すんだよ、僕はそれを知っているんだよ」

散歩のときは私のほうがおしゃべりだったのに、酒に酔った元夫はそれ以上におしゃべりになる。最後にはいつも政治的な話に変わっていって、それで演説したことで納得したのか、終わる。なんか今回は、香港と中国の関係についての演説だった……

いつもより濃度の高い酒のせいで、悪酔いしたのか、元夫はベッドの真ん中に転がりこむと、すぐに寝息を立てはじめたので、私も、寝ることにした。でも、ベッドの真ん中を占領されているので、私が眠るためのスペースがほとんどなかった。

壁と、元夫の間にある、40センチくらいのすき間にこの体をねじ込み、我慢して寝ることにした。

そうして朝が訪れて、またお腹がすいた、朝ごはん食べたい、って言うから、味噌汁とスクランブルエッグを作って一緒に食べたあとで、またベッドの上でくっつきながら、猫がなんかシャーッ!て怒ってる動画を観て笑いあっていた。でも、相手の肩口に顔をくっつけていると、すぐ傍に感じる、笑う気配が、なんだかとても泣けてきた。一瞬、心の中を、離れたくないという想いが駆け巡ったので、見えないところで、両目が涙でにじんで、一人は嫌だと思った(一緒にいたいっ!て思った)。

そのあとは、朝のきつめの光がカーテン越しに差し込んでくる、わりと明るい部屋の中で、……なんか自然とそういうことになっていて、この間より、もっと深く、繋がりあえてた。激しくはないけど、秘めてる想いを確かめ合うような感じで。結構気持ちいいけど、やばいと思った。

でも、外だしされるので、私との子供は望んでいないのかなと思って毎回つらい。私はなにやってるんだろうな……

多分、私がわからないように、相手も、わからないままに会いに来ているのかもしれない。

……勿論、再会してから楽しいことばかりではなくて、お互いの性格はもう変えられないから、思わず顔が歪むようなこともある。そのたびに、だから、やめておけばいいのに、と自分を責めた。

特に仕事のことで微妙に説教をされたり、借金の心配をされるたびに、そう思うことがある。私は自分でなんとかしているのに、それなのに保護者視点から、また昔のように上から押さえつけようとするのか。けど、そうした感情すらも伝えられなくて、迷うままに心のドアを開けると、相手が入り込んできて、だんだん逃れられなくなってゆく。