heartbreaking.

中年の末路とその記録

工場のライン作業ではライン稼働中にはトイレに行けない。あと工場には外国人が多い。

何故私が工場のラインの仕事を嫌うのか。それについてお話ししようと思います。

トイレに行きたい時に行けません。ラインが動いているので、人が機械に合わせなければならない。

ある機械系の工場で、先輩に、トイレに行きたい時はどうするのかを尋ねたら、「我慢し続けるしかない」とだけ言われました。

食品工場である場合もそれは暗黙のルールで、ラインが稼働中に抜け出すことはほぼ不可能かと思います。

それに加えて、大きな食品工場はトイレに行く際に白衣の一部を着脱する場合が多いので、かなり面倒となる。

小さな食品工場であると、そうした細かいルールがなく、白衣のままトイレに行けることもある。

いずれにせよ食品工場のラインに勤務すると、白衣に着替えねばならない。個性が完全に奪われてしまう。帽子を二重に被り、手袋をはめ、長靴を履き、誰が誰なのか慣れないうちはわかりづらい。目だけ出ているので、顔を隠すほうが働きやすいという人には向いているのかもしれない。

顔を隠す、そんな環境では、社内恋愛など程遠い。

食品工場の白衣は仕方ないが、それ以外の仕事に従事する際に、制服というものはスタッフのやる気を左右させるとても重要なものだ。その会社を上昇気流に乗せたいのなら、格好いい制服にすべきだろう。あるいは私服の個性を認めれば、のびのびと個人が能力を発揮できる。

また、工場のライン作業ではアジア系外国人に出くわします。そういう人達のほうが、日本人よりも役に立ち、なおかつ日本人に教える立場になっている場合もある。彼らは目の前の仕事を淡々と、しかも素早くこなし、入りたての日本人にその圧倒的な差を華麗に見せつけ、時に心を折らす。

食品工場の場合、主婦が多い。フロアのドアを開けると、そこに何十人という主婦達がいる。その作り出す独特の空気から、悪酔いし、働く以外の疲労感に取り巻かれてしまう。

主婦達は、入社したがこの環境に慣れず精神的に病み何日も休んでいる主婦についてを、うわさし合う。しかしその休む原因を作り出しているのが自分達である。

50代以降の主婦になると、人のプライベートなことを聞きだそうとする。彼女らの楽しみは、もうそれくらいしかないのだ。

女ばかりの職場になると、小さな派閥があちこちに出来上がり、自分達よりも後から入ってくる新人がどうであるかを観察するのが彼女たちの大いなる楽しみなのである。

気持ちよく動くためには、社内の男女の比率を極端に偏らせないことが大事ではないかと思います。

私がこれまで働いたことのある工場について話します。

一番長く続いたのが、パン屋のラインの仕事でした。

何故、辞めたのかというと、勤続年数の長い先輩に、いじめられたあたりから疲労が溜まっていたのかもしれません。

先輩に、時給をいくらもらっているのかを聞かれました。

その時に答えた私の時給が、先輩の時給よりも多かったことから、陰湿ないじめが始まりました。

新しく入った会社では、先輩に時給や、給料の額を尋ねられても、それに正直に答えてはいけない。答えなければ不審がられる場合は、実際に受け取る額よりも、少なめに答えておけば、無用な争いを避けられる。

パン屋で私を長くいじめてきた先輩については、私が追い出した……

先輩が私のロッカーを勝手に開けて、デパートで買ってきた花畑牧場の生キャラメルを入れていたようで、私はそれが誰が入れたものかわからなかったので、その日はそれを持って帰ることにした。

翌日、ラインの前に並んで働いていると、隣にいるその先輩が急にヒステリックに怒り始めた。

「あんたは、人に物をもらっておいて、お礼も言えんのかね!」と。

隣にいる先輩がこちらを向いて、私に対して怒り続けている。そもそもお礼を言われたくて、こちらとしては別に欲しくもない花畑牧場の生キャラメルを入れたのだろうか。面倒くさい、そんなに構ってほしいのか。言いたい放題言っているが、どうしても避けられない状況にされていると思った。とうとう私も我慢の限界を超え、作業の手を止めて、その先輩の顔を睨みつけ、ドスの効いた声で、工場中に響きわたる大声で「お前なにわけのわからんことばかり言いよんのじゃ!人を馬鹿にするのも大概にせえよ!お前が陰で痴呆症とか悪口言いよんのも聞いとんじゃ!なめとったらあかんぞこら!」と怒鳴り返してやると……

先輩は私に対して何も言えなくなったようで、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、そして青ざめていた。

普段、大人しい、なにも言い返しそうにない人間が本気で怒った時の恐ろしさを見たか。

工場内がシーン……として、工場長らも、何事か?と集まってきた。その後、社長も含めて話し合いとなったが、私はなにも悪いことはしていない。仕事でも明らかに私のほうが役に立っているので、皆が私の味方になってくれる。翌日以降も私は仕事に行ったが、先輩の姿はもうそこにはなかった。

結局その先輩は自分が会社を辞めるしかなくなり、誰もそれを悲しんだり、残念がる者はいなかった。

そんなこともありましたが、工場のラインの仕事を選ぶ人がいるから、毎日美味しいサンドイッチやおにぎりが食べれるので、その存在に感謝せねばならないのですが、しかし自分がその中で働けるかというと、私はもう無理です。とにかく人間関係がややこしく、環境がそうさせるのかどうかは知りません。

今は、工場以外の仕事に就いています。社会保険にも加入し、何十年でも働けそうな安定した大きい会社の中で、いくつかの業務を任されています。

自分が行きたい時にトイレに行けるし、煙草休憩もいつでも可能。

私は人間として当たり前の権利が通用する会社で働いています。