heartbreaking.

中年の末路とその記録

一か月以上連絡がないので諦めていた会社の男性に久々に逢えたので、連絡しなくてよかったということなのか……

自分が主人公になれる恋愛ほど、生きる原動力に容易に直結するものが他にあるとは思えない。特に上手くいき始めている時、そう感じる。

初めに視線が交差した時から……これまでを振り返れば、既に書き記されたストーリーの上を歩いているような気分だ。

しかし小説のように、しんどいところを早く読み進めることも、いいところでじっくりとどまることもできない。後悔と、駄目だったと思う部分を再構築することの繰り返し。

努力が報われるのは、努力ではどうにもならない部分がもともと恵まれていた人だと思いながら努力せず恵まれていた自分のある部分を愛されることで実感できる瞬間もあるし、愛されたい部分に尽きている運がこの恋愛を終わらせたと絶望に浸ることも容易い。

恋愛が上手くいっていない時は、妙に独り言ばかりが増えてゆく。これまで夢中であったストーリーを途中で放り出してしまいたくなるほど静かに荒れ狂いながら……眠る前に虚しさを増加させる。

何か意味ありげなことを語ってみたかっただけですスミマセン。結論から言うと、好きな男性と一か月以上ぶりにようやく逢えました。

その男性とは同じ会社で出会い、初めのうちは軽い気持ちでしたが、逢えば逢うほどにその男性の持つ魅力に惹きこまれ、今では私のほうが夢中で……片想いなのか両想いなのかもわかりかねる。

だから別れ際には必ず尋ねるようにしている。「また逢ってくれますか?」と問うと「わからない」とだけ返ってくる。

「次の休日は?」「忙しいから無理だと思う」

「その次の週は?」「多分無理」

いつ逢えるのかわからない男性に恋してしまった。

4度目に逢えた時に、そろそろいいだろうと思い、愛称で呼びませんかと尋ねてみたが、あくまでお互いの名前は「さん」付けで呼ぼうと言ってくる。

抱かれて、その後は突き放されているようで、不安な日々を送っていた。

そっと触れた肌に流れていた、汗の感触がこの指に離れない。

体中汗まみれになるほど女を抱くことに全力投球することもできる、その情熱を、とても眩しく感じた、その時からこの男性の虜になった。走り疲れたアスリートのように疲れているその体のみならず、すべてを……他の誰にも渡したくないと思った。

その男性の隠している過去の女も含めて私は感謝する。その過去の女がこの素敵な男性を作ってくれたのだろうか……

そして終わりには、瞳を閉じたままで、体の一部に長い口付けをくれる。背中だったり、膝だったり……私を少女へと変えてしまう魔法のよう。

私はその男性のことが地球上で一番好き。

私の目にはダイヤの原石のように見える。この人の真髄を知るのは抱かれた女だけ。

追いかけたい。いつでもその体に抱きつきたい。好きだって伝えたい。

だけど連絡できなかった。

連絡もこないし、こちらからも連絡しない。

飽きられたのかと思った。私の体に、私の性格に、私のすべてに……

悩み続けた。すべてが本当には楽しくなかった。

実は、空っぽだった。

この休日に連絡がなにもこなければ諦めよう。

その次の休日も同じことを思った。

諦めるなんてできない。

まだ好きだ……

逢わないほどに、もっともっと好きになる。好きになり続ける。

どうしようもない、この心は囚われのまま、貴方の記憶に操られている。

そんな幾夜を越えて……ついに連絡がきた夜は、スマホの画面を見て1分くらいは動けないでいた。

メールを打つのをずっと我慢し続けることが、その男性との恋愛においては正解だったのだろうか。ちなみにその男性は仕事が忙しく、休日にも仕事が入ることがある。

恋愛していると、どれが正解かわからないとき、空き時間にはスマホでネットで恋愛情報サイト巡りをしてしまう。逢えるための、答えが欲しかった。

好きな男性に逢えなくても、相手が「逢いたい」という気分になる日が来るまで、自分からは何もしないで待つことで、また逢えたのかどうかはわからない。もともといつかは逢うつもりだったのかもしれないし、連絡がないことでたまたま夜寂しくなり逢おうと思っただけかもしれない。これまでの体の相性の良さも関係してくるだろうけど、それだけは相手の感覚を通して体感できないため、あくまで自分の願望でしかない。

もう1カ月以上も二人きりで逢ってはいなかった。

趣味に没頭しようとしていた夜……、ショートメールが入る。

……こんな時間に。

想いが同じだった、あるいはただ暇だった、どれでもいい。

「久しぶりだけど」という前置きの後に「まだ起きている?」という内容だったので、今起きたところだと返信した。

好きだということを伝えるために、2~3分以内に急いで返信した。

すると「いまから逢わない?」と、さらに返信がきたので、それは……

逢わなければ嘘でしょう。

すぐに身支度をして逢いにゆくと、私好みの車から降りてくるその雰囲気がいつもと違っている。

顔を合わせた瞬間にこれまで見たことのない……優しい表情を向けてくれたような気がする。久々だからなのか。

逢えない空白の時間が縮まるのに、時間は必要なかった。

趣味が合わないとか、笑いのツボが違うとか、そういった問題は些細なことのように思えた。

二人でいられることがなによりかけがえのない今。

隣にいて、その声に包まれている。すべてが大切で、きっと次も逢える!

そんな勇気がみなぎってくれば、明日以降も頑張れる。

その男性は好奇心旺盛なようで、車のこと、音楽のこと、テレビの中の話題、世界のことについて思いのほか良く知っている。ネットで知りえた情報の知ったかぶりではなく、確かな知識で、明確に答えられる。

だから隣にいて、退屈しなかった。

なにより、楽し気に話し続けるその男性を、その横顔を見続けられる幸せを噛み締めている。

幸せで、私はただ貴方の隣にいられるだけで、それだけでいいです。

もし、付き合ってもらえるなら、煙草をやめることは私の中で決めている。

美味しい手料理が食べたいなら、実家の母に習いに行き、その男性が心から幸せを感じられるよう努力する。

私は、付き合ってもらえるなら、これまでの自分を捨て、自分が不幸だと思う過去も貴方の前では封印し、貴方の幸せを一番に追求する。

自分が追いかけられる側の恋愛もそれはそれで楽しいけれど……

自分が追いかける側にならざるを得ないほど誰かを愛した時ほど、幸せや奇跡を強く感じることなどない。