heartbreaking.

中年の末路とその記録

朝は訪れる

会社都合退職となり、現在給付している日額は4,469円です……生かさず殺さずの微妙な給付額だけど、出費が減り、なんとか生活できている。

毎日、目が覚めると日曜日なのは……地味につらい。「嗚呼ヒマだな」と呟いていられるうちはいい。テレビを点けなければだいたい平和なので、家庭を持たない人はテレビは点けないほうがよろしいかと……無職で、テレビをメシ時に点けていたのがこれまでに狂った主な原因だった。テレビに出てくる主婦に「独身者を差別するな!」とリモコン叩きつけたい気分で何度もチャンネルを変え、子供子供主婦主婦赤ちゃん赤ちゃんに部屋で発狂し(ここまでくると病院に監禁してほしいと思う)、自分が異常なのではないのかと疑いたくなる……、静かに俯いて頭の中で整理する。これまでどんな問題を抱えてきて、それをどうやって一つ一つ解決してきたのか考えてみる。笑われたり、失望されたり、そんな些細なことなど年数が経てばどうでもよいが、致命的な言葉とそれを吐き出す相手の目だけは如何にしても取り除くことができない、埋め込まれてしまっている。だけど外周をぐるぐるまわってるだけの衛星などどうでもよい、その中心に動かないで今もずっといるものはなんなのか、それはずっと昔からいた。もし自分以外の人がいたのだとしたら取り除けない。中心から追いかけてくるものから逃げ続けるしかない。それがこの厄介な性格をも作り出した元凶だと言いたくても誰も気付きようのない場所にそれはずっといてこのすべてをコントロールしている。変えられないものに支配され続けている自分、それによって構築されてしまった自分、破壊するなら自分も一緒に消えてしまうから壊すこともできない。ただ見つめているのも怖い、触れることはできないが心の痛みを、弱っている隙間にたくさん詰めてくる。この頭の中に反響する悲鳴を餌に薄い触手を隙間なくこの体の内部にびっしり張り巡らせ、現状を変えようと何度試みても元のまったく同じ場所に引き摺り戻して何度でも私を絶望させる。変えたくても変えることができない性格について考えることが、これ以上失敗しないために大事だと思っていた、ずっと宿題を背負ったまま20年以上社会の中で自分と戦い続けてきて今のところ1勝もできていない。

利用されているだけの、妙に物分かりの良すぎる、だけどキレると異常すぎて周囲の人たちが警戒しだす、奇妙な自分を殺したいけどそれは防御壁で、誰かの光を浴びて涙を流す自分を直視したくなかったから道化師でいられたらきっと傷付く度合いが軽傷で済むかもしれない。ただ気が弱くて立ち向かえなかったから過度にストレスをため込みすぎて破裂したのだとしたら、過去もなにもかも関係ないのか、そうとは思わない。なにかがこの性格をこの地点に引き摺り戻して何度も同じ人間関係の失態をもたらすのかと考えた時、克服できた問題であっても克服できなかった頃に深く傷付けられた悲しみは性格を本当には変えることはできない、いまでも恋愛できず自分に自信を失ったままの性格をどこか継続させている。その殻を破壊するほどのエネルギーはなにをしても得られなくて「あの時」必要だったのだということ。あの時、自分は貴方に抱きしめられたかったのだということ。人間が怖いのは、恋愛が怖かった過去に淡く似ている。欲しかったのはあの時、恋愛できる健全な心と体だった。どうにもならない嫌な過去はいつでもこの心と体を追いかけてくる、ちょっと油断した心の隙をついて悪魔の手をひろげ、また道化師に舞い戻り、自分を見失いそうになってしまう。この心と体を傷付けた人を怨む感情はどうにもできなくても、それを振り切って走り続けることはできる。どこまでも走り続ける、何度追いつかれても何度でも振り切って……そして……振り返ったら頭のすぐ裏側にべったりとはりついているままだった。もう共存し続け誰も花を供えぬ場所に朽ち果てるしかないのかと歳を重ねるごとに、諦めたふりをする、忘れたふりをするのは上手くなってきた。いつまでも誤魔化し続けて、誰かの光に心で涙を流し続けているとそのうち本当の自分がこの世界の何処にもいなくなってしまいそうで……

いつも油断する度に頭をブンブンと左右に振りたくなる。嫌な過去は記憶の中から殺すことはできない。どうでもいいことに没頭してしまいたくなるのは、ラクな逃げ道のようでいて、振り切れない場所にやんわりとそれを匿っていていつでも手を出してこれる状態にさせている。スマゲーしてて「意味がない」って悟って気力失った頃と、「悪いことをされたから意味がない人生を歩まされている」って思っている感情が裏表でくっついてしまったような時は、スマホ投げ出すか握ったままうなだれて子供のようになにか答えを求めている。結局、なにやっても振り切れないのか……走り続けるしかないってことなのか。どこにむかって……

だけど走りたくても止まっていなければならない時もある、その時は動けなくて悲しい。その空白を埋めたい。

爆発的に内部から沸き起こってくる悲しみ、理解されない、誤解しかないこの世の中を歩いてゆかなければならない絶望をどうにかしてくれるのは酒でなければ到底不可能。いつか飲むために大事にとっておいたビールを飲み干した夜、薬以上の効き目を感じた。両脇に天使が降ってきたのでフラフラ踊り、部屋の空気全体が優しく包んでくれていた。無職だからこそ酒を飲まなければならないような気がした。金はどうにか工面してでも酒を飲むことで夜が続くことなくいつかきっと人生の朝が訪れる。